Miruntius ミュージカルと雑記その他

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映画『群盗』感想

もうずっと前から気になりまくってたんですけど、なかなか勇気がでなくて今まで観てなかったんですよ…だって、ハ・ジョンウとカン・ドンウォンなんて…ヤバイ予感しかしなくないですか??でも、流石にそろそろ!って思いまして…いや、ヤバかった…!!

 

ユン様…!!!ユン様!!!

いや、正直この一言に集約されちゃうかも…や、色々別にあるんですけどちょっとカン・ドンウォンがあまりに凄くてえ…まあ私、カン・ドンウォンのことめっっちゃ好きですけどあんなん、正直別にファンじゃなくても強制的に"美"を叩き込んでくるじゃないですか!!?何なんでしょうかあの執拗な(としかいいようがない)、"美"のシーン…怖いよ…癖の連続すぎて私は…頭が…混乱しました…夜の庭で花弁が振り掛かるシーンとか、桜散るユン様とか、髻あたり斬られて髪が散った瞬間、こんなん…現実じゃなくない…?!(まあ現実ではない)感がヤバくて…何??髪降りた後のユン様、こう、情念みたいな凄みもあるからか日本画に出てくる女の幽霊みたいで良かったな…橋姫ってあんな感じかも!(?)

あの、でもね、ユン様(カン・ドンウォン)、別に美しいから刺さるとかではなく(いや美しすぎますけどね??)、私の癖のど真ん中、父の関心を求める息子で家父長制に殺される男じゃないですか…ユン様はそりゃ正直罪業にまみれすぎたので、行く先には死しかありませんけど、トチが過ちから喪失を経て義賊になるのに対してユン様は誰からも手を差しのべられず…母に売られ父に関心を持たれてると思ったのに結局正妻から弟が生まれれば棄てられ、母も殺されるユン様、父からの関心だけを求めて生きながら夜叉になった男…チョ・ユンの生涯は永遠に家父長制に搾取されてそこから抜け出す道も見出だせないまま潰されてくので、チョ・ユンを通じて見える家父長制の下の血族主義の気味悪さがいや増す訳ですね…ああいう家父長制と身分社会にに苦しめられた筈なのにそこから這い上がる為に自分を苦しめた社会に適合して更なる弱者を作り出す構図、エグすぎてやはり家父長制を打倒せねば…!!になりますね!

トチがユン様の髷を最後とらずに終えるのも、ある意味トチとチョ・ユンは裏表の存在だからなんでは…??トチにはユンの事情はハッキリわからないでしょうが、赤子の命のために我が首差し出したユン様観ればなんとなく思うところはありましょうよ…(とはいえ、トチのメインフィールドの竹林ですらユン様普通に強すぎたので赤子ハンデがなかったらトチ勝ち目ないな~と思ってたらやっぱりね!?になったの、なんというか…や、全然いいんですけどね!?) 

それでいうとユン様が赤子を殺せないの、なんというか…すごいね…考えすぎなのかもですが、生まれた命を摘む行為、父から棄てられ人間ともみなされない自分を否定するみたいな行為に繋がるんですかね…??なんか、悪業にまみれた男の最後の倫理線が赤子なの…すごい…ほんま…や、這ってくる甥っ子取り上げて腕に抱くユン様、もうあんなん鬼子母神じゃん…!!!(???)

あと完全に蛇足なんですけど赤子抱いたまま戦う男っていうとめっっちゃ趙雲思い出しました…趙雲もなんかやたらめったら美男のイメージあるし、ハンサムな男は赤子抱えて戦う習慣が…??

まあともあれ凄みのある男すぎて…悪と業と美を捏ね回したらああいう人間の造形になるんですか!?みたいな圧があり…圧巻でしたねえ…

 

 
他諸々

ちょうどこの間、『朝鮮民衆の社会史』(趙景達、岩波新書)を読んで、義賊は朝鮮でかなり人気がある(勿論言うても盗賊なので全てが良いわけじゃ全くない)、ってみて、まあ人間アウトロー好きだもんねえ…くらいの気持ちだったんですが、群盗の義賊、結構理念とか信義みたいなのが、本に書いてた通りの話をしていて、なるほどな…!でした。あと西部劇風に仕立てて義賊側7人で敵役が領主(?)なの、「荒野の七人」だなあ…となりました。ちょっと思ったのが、トチ(ハ・ジョンウ)の造形というか細かな動作とか、結構北野武っぽい感じがしません??風貌もなんか結構北野武を彷彿とさせる気がしました。

あとこれは単に思い出しただけなんですが、人間が竹林でかっこいい戦いをしてると「グリーンディスティニー」を思い出します。

あとまあ流石にトチが20歳、マブリーが22歳、のとこ無理があるでしょ??!ではあるものの、考えてみれば近代以前の人間、洋の東西を問わず寿命が短く、貧しければ貧しいだけ栄養状態の悪さや肉体の酷使で現代人より遥かに外見の加齢が早かったはずなので、まあ…それの表現なんかな??とは思わなくは無いです。逆に一応両班を父に持つ若様であるユン様が若々しくて美しいのも両班と被差別民の対比なのかな…??お洋服がめちゃこまめに変わるのも…(しかし若様は流石に美しすぎるのでは?)

義賊側のメンツも良くて、私はトチもさることながら、チョ・ジヌンのテギが好きでした…参謀なんだけど最後の方トチが力業すぎてイマイチ何してたかわからん義賊イチのインドア系…あと主領と坊主…そっちがヒョンだったか…!!!でした。ユン様がお坊様の前で人斬りしまくった後、貴方もまだまだ悟られていないようだ、みたいなこと言う残酷さと傾けた顔の角度の凄みもヤバかった…

あ、そう、お坊様で思い出したんですが、「サバハ」もそうでしたが群盗も弥勒が…って話をしていて、韓国は弥勒信仰やはり強いんでしょうか。日本は平安以降くらいから阿弥陀信仰の方が強いと思いますが、韓国は弥勒信仰のが強いのですかね?気になりました。

 

という感じです!正直ウェスタン風で時代劇やるバランスとか色々突っ込み処はあると思うんですが、まあでも家父長制支配とそれに伴う身分差別や弱者からの搾取は、全ての人間を不幸にする、をやっていたのが個人的に大満足だったのでトータルめっちゃ良い映画体験でした。私は所謂「父殺し」の物語オタクなので、ユン様に必要だったのは父を棄てて家を燃やす決意であって欲しかった…進退窮まって初めて彼はそうした訳なんですが…誰のためにもならないので、やはり家父長制は討ち滅ぼされるべきですね!!

 

追記

ほんまにちょっとだけ書き忘れたんですが、タイトルの「群盗」、最初ウェスタン風なのもあり「群盗荒野を裂く」に被せたのかなと思ったんですよ。(ガトリングも出てくるし!あのガトリングかっこ良かったですね…獅子頭?付き…)

でもストーリー全体を見るに結構シラーの「群盗」の方かな?って気がして…いや普通に違うかもだが…割合話の筋的にはシラーの「群盗」にインスパイアされてんのかしら…みたいな…「群盗」、社会的革命行為(?)の話として割合享受されてるらしいし…映画が章立てされてんの、タランティーノっぽいなと思ってたけど戯曲の影響なんかなとか…(章の数は違うしこれはまあほんま違う気がする)

まあ全然違うかもしれませんが!!