Miruntius ミュージカルと雑記その他

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映画『破墓』の話

絶対観るぞ観るぞ~!!の気持ちで勇んでいった映画『破墓』が期待以上で良かった過ぎるので!!久々に!ブログを書く気に!!ネタバレはフルスロットルでいってます!最近直近で観たのが『悪魔と夜ふかし』だったんですけど、『破墓』もめっちゃなにも起こらないはずはなく…!?系映画だよ。セットで是非観よう(??)

 

 

帝国主義への抵抗と周縁の連帯

破墓、まあ前評判から日帝時代と関わりをもった何かなんだなと思いながら行ったんですが、かなり明確に日本が植民地時代に遺した禍根の話をしておりました。(あ、地脈に杭打っていったのは勿論都市伝説です。そうではなく、長男だけが祟られる一族とか、杭の上に埋められた先祖とか諸々の展開の話ね)

特に巫堂ファリムと将軍の対話が象徴的なんですが、ファリムは「戦争は既に終わっている。ここは私たちの場所。早く立ち退け」って将軍に言ってますけど、これ、『PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ』でも扱った私たちの土地。私たちのアイデンティティの問題じゃないですか…土地ってどうしたってその場所に生きる人間の確かなアイデンティティと結び付く訳なので、そこを一方的に支配され、未だにそれが続いてるって意味で地面に打たれた杭のメタファーは結構強い気がしました(しかし割合トンデモ都市伝説ベースなのは…??)

破墓、主人公4人組の元の改葬動機が金、なんですが、そこからあれよあれよと言うまにヤバいのが見つかって最終的に将来の世代のために、になるのもやはり土地/民族とアイデンティティの痛みと回復の話なんだよね…という。結果事態を収集して一応大団円的には収まりますが、当事者には精神的物理的に痛みが残り続けるのもそう…

 

あ、あと将軍が関ケ原由来っていうちょっと具体的な感じ、あれは多分関ケ原なら時期的に朝鮮出兵に関わってるのがあるからですかね。その点でも過去の時代にも朝鮮を蹂躙した亡霊(将軍)が、日帝時代に再利用され、現在にまで遺恨を遺すっていう長期的な歴史の負の重なりも感じ…あと長男だけに祟る、日帝に協力した祖父もさ~結局言ってしまえば将軍掘られないための重しみたいにされてる訳で、そういう点においては彼は彼で加害者でもあり被害者でもあるし基本的に全部植民地支配のせいなのでやるせないんですよね。

 

んで、話は変わるんですが(変わるかな?)、そういうやばいシロモノを打ち祓って解決するのが、社会的に言えば謂わば周縁に存在する人達なのが良かった…葬儀屋と彼とセットで仕事する風水師が生死の間にいる曖昧な存在なのは勿論なんですが、特に巫堂同士の連帯が大変良くて…ボンギルが神を降ろして以来、日常を諦め巫堂として生きてる理由がファリムと二人であれば、だったのと同じく、もうひとつの巫堂師弟の場合もそうだろうし、ファリムと姉弟子もそうだったんだろうなーという感じの、周縁に生きなければいけなかったが故に連帯し合う必要がある、そういう結束のあり方でしたよね。周縁に生きる、つまり社会的マジョリティの位置から弾き出された者達は互いに頼り合い、守り合うことで生きていける、っていう周縁に生きる人々への讃歌でもあるよね…ボンギルくんが師匠の回りをうろつきまくる大型犬なわりに徹底して恋愛ベースを持ち込まなかったのも男女間には恋愛以外でも連帯できる生き方があるよという部分を明確にしててありがたかった…そういう点で言えばさ!?なんかこないだ物語の最後が大体登場人物の結婚式で終わる~!皆が求めてるから~!みたいな話あったが、結婚式は結婚式でも主役の誰かじゃなくてサンドクさんの娘さんのだったの、変にタイムリーなカウンター感を得られて謎にニコニコしました。

 

日韓オカルト描写

正直破墓の日本的オカルト描写、妙にあるある~!で良かった(オカルトというか古典の妖怪観??)

わかりやすいとこで言うと経文が書かれた部分には触れられない「耳なし芳一」とか、兜に残る怨念、そういう荒ぶる「モノ」を祀り上げて抑え込む信仰、「キツネ」の陰陽師etc…もうね、色々あって良かった…なんか武将の亡霊が瓜と鮎好きなのもやたらわかる気がして面白かったし…(これなんか元ネタあるんかな??何か絶対いそうってか武将と瓜/鮎って何かお約束感ない??)。武将が初めて姿出た時、でっか!ってちょっと面白かったんですが、所謂あれが物体に妄執が顕現した「モノ」なら破格の大きさは何か納得だし、恐ろしい何かとしてのビジュアル化が上手いな~と思いました。あとさ~!鬼が生き肝大好き!してるの、ダイレクトだと黒塚の鬼婆だー!ってなったし私はどちらか言えば『今昔物語集』の平貞盛の児干っぽい!!ってなりました。私は韓国の古典的な妖怪話は全くわからないのでこの辺りのオカルト描写が、どの程度韓国とも共通してるか全くわからなかったんですが、少なくとも日本的古典オカルトあるあるに関してはやたらめったら大満足な感じがしました。私はどっちか言えば日本のオカルト話は現代的なホラーより古典オカルト話が大好きなので。はい。

 

あとさ~!あとさ~!!『哭声』とか『クローゼット』、『憑依』とか大好きマンなんで、巫堂の祈祷/呪術シーン良かったよ~!!動きやすさ重視なのかファリムがコンバースなのも最高!!ボンギルくんが儀式前の師匠の最終衣装チェックは絶対自分でやるタイプっぽいのもサイコー!!巫堂、未だににあんまり良くわかっておらず、どうやら憑依系(ボンギルくんとか『憑依』の凄腕占い師)と呪術系(ファリム、コクソンのファン・ジョンミン)にざっくり分かれるんかな~でもそれだと『クローゼット』ホ室長とかどうなんだろ~あと太鼓叩く人は巫堂なの?どうなの?とか色々気になるんですが、それはまあ今後色々勉強するとして、とりあえず祈祷シーンが好きでした。「카자~!」って言いまくってんのも何か良かった。勢いが良い。

 

 

とまあ色々多分まだまだ感想はあるんですけどあまりに漫然としすぎてるからこれくらいで…私はさんざっぱらファリム/ボンギルは恋愛ベースじゃなくて良かったといい続けましたが、ファンフィク時空ではあんな信頼、リスペクトは愛!みたいな気持ちなのでヌナの回りをうろうろする大型ワンコには大変…大変夢があるなと一方では思います(懺悔)

あ、あと私は常々喪ったダークユニバースくんのことを、ユニバースとして作られたのにいない子扱いされたドラキュラzeroのこと含め擦り続けていますが、『破墓』、『クローゼット』『憑依』系の同業者同士の悪霊バスターズ感、大変よろしすぎて韓国映画にダークユニバースはあったんですよ…!!これをダークユニバースにしません?!の気持ちになれました。実のところ作品感のクロスオーバーが見たいだけです。

同業者だからと言って『哭声』2人組を仲間に入れると彼らの信用が地に堕ちてしまうので悩ましいですけどダークユニバースのコンセプトにはあってませんか?(そうか?)

 

追記

鮎と瓜大好き男、誰だっけ~?!状態だったのをフォロイーさんのおかげで解決しました!藤原朝成でした!!めっちゃスッキリ~!別に武将じゃないし時代も違うんですけど、鮎と瓜が好き(今昔物語集)、怨霊になった(大鏡)の2つがなーんかあったなーと思ってたんですよね~わかって良かったです。しかしこの男、そういや『十訓抄』には検非違使時代の百人斬の話とかもあったな…