Miruntius ミュージカルと雑記その他

ミュージカルとか映画とかまあ色々

ミュージカル『レミゼラブル』ソウル公演感想

昨年後半にどうやら私の韓ミュの推し、ミン・ウヒョク氏が遂にジャン・バルジャンやるらしいわよと情報を得ましてですね、はい。馳せ参じたんですわ…あのね、ウヒョク氏がどうこうも勿論あれなんですけど、レミゼやはり滅茶苦茶好きです…韓国キャストのパワーの強さも最高で、正に燃えるような革命ミュージカルでしたよ。

あと、ブルースクエア新韓カードホールはでっかくて良いホールでした。遠すぎかなと思いつつ三階席とったんだけど舞台俯瞰するには十分でした。(せり上がりが凄いからよく見える反面、マジで三階ともなると高っかくてちょっとビックリしたのは秘密…)

 

 

韓ミュおなじみキャストボード

 

ミンバルジャン、良過ぎる

とりあえずこの話からさせて欲しい。まあ上でも言っているように、今回のレミゼは半分くらいミン・ウヒョクのバルジャン見に行ったようなものなんですけど、昨年(2023年)夏に香川で歌ってたときよりさらに声にも厚みが出ており、「まだ…成長してるですって…!?!」みたいな若干の驚愕も覚えました。いやあ…どう考えても年々声域も声の厚みも幅が出てると思うんですけど…ちょっと良すぎませんかねウヒョク氏…

まあ、技術的なことはさておき(???)ジャン・バルジャンとしてもかなりど真ん中のバルジャン、って感じだった気がします。仮釈放されてから社会に拒絶された後の粗暴で自暴自棄な荒れ方と、神父に出会って過去と決別して人生歩み直そうとする決意がストレートに表れてるのも良かったし、何よりコゼットに対する責任感と庇護欲の強さが良かった…バルジャンってファンテーヌに対する罪悪感も伴った庇護欲求からどう考えてもコゼットに対して若干「支配的な父」的側面があると思うんですけど、割とミンバルジャンそのあたりの父権性の強さが随所に出た感じの造形で結構説得力があった気がします…とはいえバルジャンはやっぱり基本陽の性質が強いし反省する男なので、自暴自棄だった時、ファンテーヌのこと、自分の罪を被るかもしれない男のこと、コゼットに対する過干渉諸々、最終的には反省して少しずつ変わって行くところが良いと思うんですが、そのあたりもわかりやすかったですね。ジャベールが自分と社会の決めた一定の規範から一歩も動けない所謂「変わらない」キャラクターだとするとバルジャンは明らかに「変化する」男なので、ジャン・バルジャンとしての成長と変化の過程がよくわかる、いい演技だったな~満足!!という感じです。後単純にでっかいミン・ウヒョクと少女時代のコゼットが一緒にいるとめ~っちゃかわいいのでもうそれだけで500点くらい加算されます。大変宜しい。

これは余談なんですけど、私ジャベールの「Stars」がめちゃくちゃ好きなので(特にノーム・ルイスのは最高すぎ)、キャスト発表の時、ウヒョク氏ジャベでもいいのでは??と思ってたんですが(贔屓の引き倒しともいう)、今回演技見てて「あ~これは絶対バルジャン側の男!!!」って感じだったのでやっぱりバルジャンで大正解だった気がします。それでいうと、ジャベールのキム・ウヒョン氏、前回のジャベールだったのもあるんでしょうがめちゃくちゃ円熟したジャベでとてつもなく凄みがありました。ジャベールの酷薄な冷淡さと固い信念、絶対にこの男は変われないだろうなと思わせる説得力が凄まじくて、どうしてジャベールが川に身を投げなければならなかったのかがわかりすぎるジャベールでした。(川と言えば、最後落ちるときの演出が大変興味深かったです)ウヒョンジャベール、どう考えてもバルジャンのいる世界では生きてはおられないので、バルジャンに道を譲ったその瞬間に彼の前途は何にも無くなっちゃうんですね…感じで言うと映画版のラッセル・クロウのジャベ系の感じでしたね!!ノーム・ルイス、ちょっと優しそうじゃん???

 

アンジョルラスについて

言うてね、レミゼの最推しはこの男なんですよ…まあこの男と彼の側にずっとひっついて回るグランテールという男をセットで愛してるんだと100万回言ってるんですけどね。あの…韓ミュレミゼ、アンジョルラスのアンジョっぽさやばない???アンジョルラスじゃんあんなん…今回のレミゼ見るまで一押しアンジョは映画版の我らがアーロン・トヴェイトのアンジョだったんですけど(アーロンのアンジョはどうしたってみんな好きじゃん。多分)、キム・ソンシクさんのアンジョ、なんていうかあの熱量??情熱?なんて言えば良いかちょっと悩むんですけどアンジョルラスが持ってる爆発しそうな割と危ういエネルギーと周囲を引きずり込むカリスマ性を体現した感じのアンジョで…もうね…アンジョルラスの概念って感じのアンジョルラスでした。声も説得力のあるサイコーの声で、「Red & Black」が一番お気に入ったんですけど、否が応でも耳を傾けざるを得ないパワーと魅力を感じさせる良い歌声だった…マリウスにも結構厳しそうであのアンジョルラス、多分「マリウスわかるけれど…(日本版歌詞)」って言ってくれないよ多分。わかんないと思うマリウスのこと。

それで、アンジョと言えば絶対外せない男、グランテールの話なんですけど…韓ミュレミゼ、マジで満足はしたけど一個言わせて欲しい、これだけは…あのね、グランがイマイチちょっと影が薄くないかな?!?や、随所随所でちゃんと出張ってるのでグランだな~ってのはわかるんですけど…なんか韓国のグランテール、アンジョとの心の距離遠くない??結構アンジョルラスとの距離を感じて、なんて言うか他媒体ほどの熱烈な信仰!心酔!って感じがなかったと思います。いやこれは私が韓国語わからん過ぎて受け取れてないことも普通にあると思うのでアレなんですけど、態度の上では結構アンジョのこと突き放した感じの距離感かな~と思いました。グランテール、(まあハドグランのこと気になりすぎてやたらめったら構いに行ってるラミンアンジョの組はおいといてなんですけど)、基本的にアンジョルラスの外見に心酔しながら彼の理想や信念に一切共感できないっていう冷笑主義の厄介男でいて欲しいのでもっと熱量的にアンジョルラスのことを熱烈に信奉しながら一方で革命を突き放した理想のない男でいて欲しいんですよ…だからこそ最終的にアンジョルラスト手に手を取り合って死んでくのが輝くのに…

というか、グランテールがあんまりアンジョルラスに傾倒してなさそうなのが影響してるのかわからないんですけど、このアンジョルラス一人で死んじゃうんですよ。しかも一番最初に…!!あれ、どう考えても納得がちょっとゆかない…前回舞台でみたレミゼの記憶、確かに朧気なんですけどアンジョ、少なくとも最後に死んでなかったかな…???グランと死んでなかったのはそうだったかもなんですけど、順番的には最後に死んだ感じになってた気がするんですが、韓ミュのアンジョ、最初に死んじゃったのでマジでビックリしました。いやでもわからないな…前見た舞台の記憶の細部が胡乱なので前のもそうだったのかもだし…韓国版にだけ責を負わせるのはフェアじゃないかも…まあとりあえず私は基本的にアンジョルラスが最後にただ一人残って、駆けつけたグランテールと一瞬の魂を触れ合わせて散ってくのがベストだと信じて疑わないのでちょっと悲しかったです、というお話でした。なんにせよ見た後に記録とっておくのは大事ですね。自分の記憶が正しいかもわかんないと感想も胡乱な感じになってしまいます。

まあグチグチ言ってはいますが、正直アンジョルラス含めたABC周りは満足しすぎるくらいしすぎました。停滞して腐敗した社会をなんとか変えようとする学生達の熱気と意思がよく表れていて、燃えるようにエネルギーに満ち溢れているのに、結果的に命を散らせてしまう、そういう物悲しさと、それでも自分たちの手でこの世界を変えようとする強い意志の力を浴びるように感じられたのでレミゼの体験としては文句の付け所がないです。改めて考えて、実際ユゴーの時代からこれだけ経ってもまだ「レミゼラブル」みたいな事がたくさん起きてることには悲しさがあるんですが、革命の力、世界を変えることを信じる力についてこんなに強烈に語る作品がこの世に存在してるのは大事だし、未だ、というか今正に必要とされてる作品だなあと感じました。レミゼのこと、永遠に好きだと思う。

後マジで手のひら返すようで何なんですけど、演出としてはアンジョルラスがバリケードの頂上で撃たれて、向こう側にグラッと崩れ落ちてく様は劇的だしあれはあれで正に「花の散るような」死に方だったなとは思います。実際自分の中に確固としたイメージが強烈に染みついてなかったら衝撃受けてたな~とは思いました。(別の意味で衝撃は受けました)

 

ロビーのアンジョ

 

 

ロビーにあったバリケードのセット
おわりに(?)

特定の二人についてだけ永遠に語ってしまったのでアレなんですけど、全体通して上でも言っているとおりエネルギーに満ちた最高の出来でした。ウヒョク氏の為…とか言いながら韓国まで飛んで本当に良かったです。根本的に自分が「レミゼラブル」という作品が好きで、ミュージカルこれだからやめられんのよなと思わせてくれた良い体験でした。女性陣の歌唱も凄まじくパワフルで、特にジョンウンさんのファンテーヌ、力強いのに打ちのめされた哀しみが胸に迫るような歌唱で、流石初演からのファンテーヌ…という感じでしたよ。あと、幼少期のコゼットお嬢ちゃん、めちゃくちゃなプリティさでした。かわいらしい高い天使みたいな声で歌ってたのも良すぎるしカテコの時にミンバルジャンに抱っこされてグルグルしてたの可愛すぎてどうにかなりそうだった…可愛くて良かったついでに、ガブローシュも大層良かったです。歌い方がマジで映画版のダニエル君のガブを彷彿とさせるちょっと小生意気でませた感じなのが良くて、それだけにあんな幼さで革命に加わって、その命を失う悲しさがいや増すガブローシュでした。

あと、最後にこれは劇場周りの事なんですけど、ロビーにバリケードとかABCカフェのセットがあって、凄い楽しかったです。バリケードで皆さん写真撮ってらしたんですが、結構皆さんアンジョっぽい格好してしっかりポース決めてたりして、準備が良い…!!ってなりました。私と同行者達も記念に撮ったんですが、特に何の準備もなく来ちゃったのでイマイチやりきれなかった感じではありますね。今度はそういう事態に備えて最初から準備して行こうと思います。あと、お写真撮ってくれた現地のお姉さん方、めちゃくちゃサポートも完璧でアップも引きも一杯撮ってくれたので、良いお写真が選べました。大変感謝しております。

ミュージカル『レッド・ブック』感想 ~私が私を語る為の物語~

前々からちょっと気になってたけどうまくタイミングが合わずに観れていなかったミュージカル『レッドブック』、遂に先頃何とかNAVER 配信を観る機会があり、滅茶苦茶良かったのです。

割と良くやりがちな何となく事前情報とかだけで6割くらい解れば御の字よ、みたいな感じで観るか!と思っていたのですが、なんとフォロワーさんに台本の翻訳文を頂き、あまりのありがたさに握りしめながら見ました。いつも6割くらいのぼんやり韓ミュわかるかな観劇がちゃんと十分わかる観劇に変わり、滅茶苦茶ありがたかったです!!内容的に原作もなさげだったのでマジのマジで大助かりでございました…『ブラザース・カラマーゾフ』の時しかり、私の韓ミュ観賞のSpecial Thanksは常にフォロワーさん達です…BIG LOVE…

感想

はい、というわけで『レッドブック』を観たわけなのですが、このミュージカル、滅茶苦茶フェミニズムミュージカルなんですよ~!!!ざっくりしたあらすじ的には保守的な社会規範に抑圧されていたヴィクトリア朝期に、女主人公アンナと志を同じくする女たちが官能小説本「レッドブック」を刊行する話なんですが、女たちがまあ、多様でそれぞれに際立ってるし、アンナに振り回される(自称)紳士のブラウンくんと愉快な仲間達、文学サークルの主催者である美麗な女装家(?)ローレライ等々、各キャラクターの個性の重なりあいが最高なんですよ…

この作品は、女性が未熟な半人前で、自立した一人間として認められなかった時代に、1人の女性が文学の力を通じて己を見つめ、文学によって自分を語るという自分で自分を語り、愛するための物語であり、文学が人に与えるポジティブな影響力を描いた話でもあって、主人公アンナの台詞にも「私は私を語る人」、テーマをそのまま体現しているものもあり、正に200点満点のミュージカルなのです…

 

主人公のアンナがまあとにかくおもしれーいい女で、『高慢と偏見(とゾンビ)』のエリザベス・ベネットもビックリぐらいの自我の強さが魅力なんですよ。「悲しいことがあるといやらしい事を考える」っていう女で、自分が恋愛したり他者と身体的に接触することについてポジティブに当たり前のことで別段恥じることでもないっていう感覚の持ち主なんですが、その感性がビクトリア朝の女性規範には全くあっておらず、自分がおかしいのではないかというアイデンティティの揺らぎを感じている主人公でもあります。所謂当時理想とされている女性像と自分の乖離が激しすぎて、「自分が何者か」についても自信が持てずにいたのですが、志を同じくする文学仲間達との出会いを通じ、自己実現の術を得ていく流れが完璧すぎる…作家仲間もそれぞれに個性的で、ローレライの丘、会長のドロシーとアンナのシスターフッドも最高なんですが、個人的にお気に入りは、『高慢と偏見』が好きすぎてファンフィクやってるオタク「ジュリア」ですね。「ダーシーは私のものなんでよろしく!」が好きすぎる…やはりミスター・ダーシーはセクシーだからね…

結局仲間を見つけたアンナ達が出した「レッドブック」が官能的すぎるという名目で彼女たちは裁判にかけられてしまい、恋人ブラウンは「一時的衝動やヒステリーを主張すれば大丈夫」って、彼自身は「アンナの為に」教えてくれるんですが、仲間達は彼女たちの境遇やこれからの為にもその主張を受け入れる中、アンナがどうすべきか悩む、というのもリアル…アンナはブラウンに説得されて一時は正気ではなかったという主張にのるか悩むんですが、自身のファンに誠実であるため、また何よりも自分自身を愛し、そのままでいいんだと認め続けるために、社会の圧力に抵抗していくことを選び、彼女のその強い意志と誇りが、結果的に周囲を、社会全体を動かしていく、という流れは理想的すぎる流れなのかもしれませんけど、実際こうやってたった一人でも社会に立ち向かった人々がいるから今に繋がる流れがあるんだよな、という現実との接合も感じられてとても良かったです。未熟で文学的な才能なんて持ち合わせていないはずの「女性」が、よりにもよって「過激」な小説を書くなんて、という建前に反して本自体は飛ぶように売れ、こうやって自分の体や経験のことを自ら語ってもいいんだ、という風に女性達がエンパワメントされて最終的にアンナにとって良い判決を生み出していく流れも、シスターフッドを感じました。アンナは文学を通じて自分を救い、アンナの文学が他の誰かに力を与えるかもしれない、っていう創作物のもつ力への信頼も、韓国ミュージカルの特徴だよなあと常々感じるんですが、この作品もしっかりそのあたりを描いており、個人的に「創作物と人間」の話が大好きなのでそのあたりも大変に良かった…

余談ですけどヴィクトリア朝、マジです~ぐ自立した意思の強い女性のこと「ヒステリー」って言うよね~!!?しかもアンナを大事に思うっていうブラウンの口から、性被害を受けたアンナに対して「君も悪いんだよ、あんな本書いてるから誤解される」とか出てくるの、まあ今でも普通にある流れではあるんですが(クソすぎる)、うええ…ってなりますね…そういうあたりのリアルさも実際にある現実な分、共感も想像もしやすかったんじゃないかなと思います。

んで件の(?)ブラウンくん、彼も良い味出してた…ブラウンという人物、根が善良で弱者を助け、正義を通したいっていう意思と反面で保守的な価値観の持ち主で無意識に差別に荷担してるっていう二つの側面の描きかたが絶妙すぎました。人間として悪人ではなく、悪気がないこと=他人を差別せず同じ人間として対等に接することが出来ること、ではないんだよっていう当たり前だけど見過ごしがちな事実を説得力を持って演じてくれてたと思います。ブラウンは自分が思う規範に全く当てはまらない、規格外な女性であるアンナに惹かれて、愛し、助けたいと思う、そして徐々にでも自らの価値観を見直して変わっていける人間である点で良い人間でありつつ、どこまでも一方的な見方で「アンナのために」と言いながら規範にそぐわないアンナを変えようとしたりもするわけで…途中、「アンナのことは全く理解できないけど、愛してるしそれでいいじゃないか」みたいなこと言っててアンナも一旦それを受け入れるんですけど、あの辺り、個人的には最終的な決着を観てもやはりパートナーにする上では、いくら理屈じゃないとは言っても譲っちゃならない価値観の擦り合わせは大事だよな…ってなりましたね!まあブラウンくんは最終的には自分がアンナの話全く聞いてなくて理解する努力もしなかったことにちゃんと気付き、愛する人が大事にすることを自分も大事にするんだってなるのでアンナとラブラブはっぴーなエンディングを迎えるので全体的にそういうバランス的にも絶妙なキャラクターでしたね!という感じです。あとね、ブラウンくん、私が個人的に「意思の強い自由な魂の女にブン回されてしっちゃかめっちゃかになる男」が大好きなんで、大層良かったですよ…ブラウンくん、最初はあんなに僕紳士です~みたいな感じだったのにおもしれー女に常識毎ぐわんぐわんに振り回されて加速度的に滅茶苦茶なってくので、とにかくおもろかったです。ああいうロマンス、めっちゃ好きよ…最終的にはアンナとマンネリ予防(?)のために探偵×怪盗パロとかノリノリでやってアンナのミューズとして申し分ない男に育って…ウケますね…あ、あとアンナの小説読んで「このフクロウって僕のことじゃん!?めっちゃ僕に似てるもん間違いないもん!」ってアンナに力説して何いってんだコイツ、みたいな顔されてたのもイタくて良かった…そんな男がちゃんとミューズの自覚ある男に育って…感動もんですよ…

 

とまあ、色々まだまだあるんですが、とにかくおもろかったし楽しめました!再演来たら現地でみたいミュがまた増えましたね!「レッドブック」、女性の自己実現や自己主張を、「真っ当な女性ならはしたなくて絶対にしないであろう」、女性の主体的なポルノ消費や性表現の文脈からやってるミュージカルでもあり、この辺りも考えたら滅茶苦茶現代と通じるテーマの一つですよね。

そして!これだけは言わせて欲しいんですけどプンレさんのローレライ、めっっちゃくちゃ良かったよ~!!プンレ氏、ドミトリー(カラマーゾフ)のイメージが強かったんだがめっちゃ可愛かった…(ミーチャも可愛いかったよ!)ちょっとお茶目で、文学への熱い気持ちと、失った愛する人の遺志を継ぐっていう信念が調和しており、アンナの導き役として大変良い仕事してたと思います…キュート…

2024初観劇フレンチロック「赤と黒」

タイトル通り、1月3日年始最初の観劇は「赤と黒」になりました。

久々に二幕もののデカいミュージカルを見れてかなり満足はできましたが、色々思うところはありつつ…という感じの演目です。

一応スタンダールの原作『赤と黒』は過去に読了済みで観劇に挑みましたが、見ながら見る前にもっかい復習したら良かったな…と思いましたね。今からまた読み直します。

 

まず、良かったところは間違いなく、女性の描きかただったかなと思います。ジュリアンの恋の相手であるルイーズしかりマチルドしかり、貴族女性として生まれたが故の家のための結婚に縛られ抑圧される人生を送らざるを得ないという、事情がはっきり描かれていてこの辺りはかなり良かった気が…

ただ、彼女達は貴族女性であり、そもそも下の階級から成り上がってきたジュリアンとは階級的に圧倒的な力関係があり、抑圧された被害者でもありつつ下層階級を抑圧し、虐げることも見捨てることも出来る加害者としての面も割と分かりやすかったのでその辺りも全体加味して階級闘争とそれを作り出す貴族の家父長制的社会制度に対する風刺的演出にもなってたかと思います。

とはいえ…とはいえなんですけども?!めっちゃ恋愛に主軸おいたせいでジュリアンの野心的で狡猾な男要素やら何やらが結構かなり減退してないっすかね?!?や、『赤と黒』、確かに恋愛小説でもあるとは思うんですけど、ルイーズとジュリアンにせよマチルドとジュリアンにせよ、あんなとりあえずジュリアンがめっちゃ惚れっぽい何が理由で好きになったかあんまわからん脚本にせんくて良くない…??(マチルドはちょっとわかりやすかったかもしれん)ジュリアンは、最下層から自らの美貌と才能だけを頼りに、時には聖職者時には軍人を目指してかなり野心的な行動をとるし、まあなので女性達に関しても彼女達を使って上に昇ろう、支配してやろうって気持ちが多少なりとも含まれてる訳ですよ…それが彼女達との関わりの中で如何ともし難い泥沼に嵌まりこんで破滅していく訳じゃないですか。その辺りがミュージカルだとわかんない…私にはわかんない…全体的に三浦くんの美貌はわかるが野心と知性は弱かったと思いますよ。かなり恋愛主軸のミュージカルになってたせいで、私としてはジュリアンが興奮すればするほど心理的に…???って感じで距離が出来てしまい、最終的な決着にもイマイチ階級闘争に絡めとられた哀しみを感じとりにくかったです。ジュリアンの才能的描写といい、目指す方向性といいはたまた女性への眼差しといい、もうちょっとなんか…なんかあったのではなかろうか。

あとまあこれはもう原作からして何?って私がずっと思ってるんだが、ルイーズが僕を許してくれた!僕が本当に愛しているのはルイーズなんだ!ってマジで…??マチルドはどうしたよおい…ってミュージカルでも再びなりました。まあルイーズはジュリアンにとって母のような存在って言ってたので、はいはいお決まりのやつね…って感じではあるのですが何れにせよマジで??でなんですよ私は。これは別にミュージカルに対する文句ではないな…

 

という感じでなんかもやついた話をズラズラ並べてしまいましたが、全体的には普通に面白く見れました。あ、でもルイーズを撃つシーン、ジュリアンがルイーズの周り周回するせいで、パリからヴェリエールまで走っていってる?!ってなったんですけどどう考えてもあそこ面白すぎない?(面白がるシーンではない)

結構久々に二幕ものの充実したミュージカルみたのも良かった要素なんですが、あと割と古き良きミュージカルというか、台詞が一段落すると徐に音楽が流れ出す感じの古き良きミュージカル感もなんか良かったです。ダンサーさん達が徐に並びだすのもね、良い。曲は流石にフレンチロック!って感じの良さで、訳詞がちょっともったりした感じだったのも、古き良きミュージカル感に一役買ってましたかね??好きな感じでした。

あとねえ、三浦宏規氏は見る度に良くなりますねえ…冷たい態度と激昂したときの切り替えも良かったし何より低温がしっかりした歌にきれっきれのダンス…マチルドの部屋にスタイリッシュにスッ転びながら入ってくる「…もう少しで、こけてしまうところでした」もいい按配過ぎますな。

 

ミュージカル『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』感想~物語の効用、もしくはポスト・トゥルースと父と息子の物語~

大学路ミュージカルフェスで無料配信してくれた『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』があまりに良かったのでとりとめなく感想など…

大学路のミュージカルフェスと言えば去年は『星の王子様』とかもやっており、なんなら過去にはあの『ブラザーズ・カラマーゾフ』も配信してくれたらしいというありがた~いフェスなんですが、今年も6本しっかり配信してくれています。今回の『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』は、初日16日に配信したミュージカルで、シェイクスピア贋作事件、所謂「アイアランド贋作事件」に取材した作品なんですが、2023年初演(?)らしい出来立てほやほやの新作の模様。3月初演で既に10月から再演してるようで、結構人気なのかな…??私はめちゃくちゃお気に召しました。男性三人のめちゃコンパクトミュージカルで、小劇場でやる良さが上手く引き出された作品な感じです。

とまあ、作品概要はそこそこにしつつ、以下感想になります!

(余談も余談ですが、私無料配信が9月の16~始まると完全に誤解してて、9月にわっくわくでスタンバイしてたんですよ…しかし10月からだったので約1ヶ月行き場のないミュージカルへの熱量だけが高まってしまい大変だった…いやでも9月16~18は土日月で、10月は月火水なんだよ…9月だと思いません??私は思いました)

 

父と息子、もしくは物語と真実の関係 

最初に断っておきたいんですが、私はそもそも父と息子の話が大好きかつ、「物語」とはなにかの話も好き、狂言回しが出る話が好きでなんならその狂言回しがセクシーお兄さんなら大満足って感じの人間なので、このミュージカルは欲張り三点セットみたいなもんだったんですよ(狂言回しセクシーお兄さんはドがつくセクシーでした!)あと、曲も最高に好きだし、これはまあ韓ミュは安定の信頼感なんですが歌がハチャメチャに上手い。満足すぎる。

実際の「アイアランド贋作事件」と結構違うのは、『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』は父(サミュエル)と息子(ヘンリー)にフォーカスした話なので、実際の事件では専ら贋作に関わらずむしろ被害者と最近は言われてるらしいサミュエルを、割と明確に名誉欲と金銭欲から息子と息子の嘘に目をそらし続けた人間として描いてたことかと思います…『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』は、息子を省みない父と愛する父に振り向いてほしい一心で嘘をつく息子の話なので、このあたりの描き方はめちゃくちゃ親子の関係に集中してました。そういう話でいうとこのミュージカルの主題は向き合えない父と息子の話であり、二人の共通点である「物語」とはなんなのか、そしてその最高峰にいるウィリアム・シェイクスピアを巡る真実と嘘について、みたいな感じだと思われます。

 

主人公なんですが、実際の事件より多分間違いなく幼い設定になってます。父に愛されたい多感な時期の感受性豊かな少年で、父からは空気のように生きろと望まれ、父が望む人間になりたいけれどもそうは生きられないことを知っているので全体的に自己肯定感の低い少年って感じ。学校をいくつか放校されてるみたいで、その理由が想像力が豊かであんまり勉学が手につかない、みたいな感じなのでこのあたり、父親の作家的素質を十二分に引き継いでます。本人は父を愛してるのに、父は全く息子を省みないので本当にしんどい主人公…そういう理不尽な報われなさが事件に発展していくので、マジで心にくるよ…

ヘンリーがたまたま模写したシェイクスピアソネットを父が見つけて真作だと思い込むところから事件は始まるわけですが、当初模写だと申し開きしようとしてるヘンリーの言うことを全然聞いてない父のあまりの喜びように、嘘をつくことに決めてしまい、架空のH氏なる人物を創作して雪だるま状に嘘が膨れ上がるヘンリー、可哀想すぎる。しかもH氏なる人物があまりに自分にとって都合のよい理想的な人間すぎて、父からの承認と他者からの関心に餓えたドツボにはまっていくわけです…ヘンリーは捨てられたもの、もう誰からも省みられないものにこそ価値を見出だす、誰に省みられなくてもすべてのものには物語がある、という信念を持った優しい感受性の少年なんですよね。それが父に対してついた嘘のせいでH氏の指導のもと(?)シェイクスピアの贋作を次々と作り上げ、その事に罪悪感を持ちつつもやめることも出来ず、最終的に自分が大切にしてたはずの小さなもの達の物語を見つけることが出来なくなって初めて立ち止まることが出切るんですが、子どもが背負っていい業の深さではない…悲しい。ヘンリーは結局、罪を告白して元の自分、ちっぽけで人に期待されない自分に戻ることに決めるのですが、昔の自分、ありのままの自分を認めてそうやって生きていくというのは、父との決別を意味するわけでもあるんですね。ヘンリーは最終的に、自分自身と自分が大切にする物語を選び、父に期待することを止め、父から旅立っていく、というので物語は終わりを迎えますが、このあたりどれだけ愛した家族でも永遠に期待し続けることは出来ず離れていく決断が時には自分を救うことになるっていうシビアな救いの物語でもある。そういう点でこれは父と息子の決別の物語でもあり、一人の作家が父の呪縛から離れて自らの「物語」の価値を見出だす、創作論の話でした。「物語」は嘘でちっぽけで、何にもならないけど、それが誰かにとって大切なものにもなりうるっていう「作られたもの」一般に対する普遍的な価値観、めちゃくちゃ私は好きなんですよ…下らなくてもたった一人の誰かを救える物語があるっていうの、物語を愛する人間にとって最高の賛歌じゃないですか??

んでまあ、このミュは主人公ヘンリーが自らの物語を見つけて旅立つ一方で、同じように自らの物語を信じたがゆえにどこにも行けなくなった父、サミュエルの物語がセットなんだよね。多分かつては息子のようにペンの力を信じ、物語を愛した父サミュエルは、いつのまにか世間からの報われなさや承認欲求、名誉欲に囚われて自分を見失って真実からも目を背けてるわけですが、サミュエルは最後まで自分が「信じたかった物語」から覚めることが出来ず、真実も息子も失う訳ですよ…サミュエルという人物、正に「人は信じたいものを信じる」っていうポスト・トゥルースを体現する人物なんですわ。見るべきものから目をそらし、自分がシェイクスピアの何を尊敬して目指したのかもわからなくなって、最後には息子も結局名誉すら失う、永遠に偽の「物語」から出てこられなくなったサミュエルは、息子ヘンリーと表裏一体のもう一人の主人公でもあり、物語の功罪を体現するキャラクターな感じもします。ところでサミュエル役の원종환さん、めちゃくちゃ歌うまいしコミカルだしアクもつよいし、この三日ほど前に配信で見た『インサイド・ウィリアム』ではシェイクスピア本人役をやってらしたんですが、もしやこれがシェイクスピア俳優というやつ!?!(違う)。良い役者さんすぎます…次は『ブラザーズ・カラマーゾフ』のフョードル・カラマーゾフなどはいかがでしょう!?!

んでさ~!!それでなんだけどさ~!ちょっと聞いてほしいんですけど!?!H氏何?!どセクシーお兄さん過ぎませんかねえ~!?どないなっとんねん!!H氏はこのミュ全体の狂言回し的位置におり、ある時はストーリーテラー、ある時は裁判官に街の噂好きの誰か、そしてヘンリーの理想的な理解者H氏になるわけですが、まずもって김지철さんの演じ分けがすごい。H氏というのは、作家の理解者、メフィストフェレスでもあり、人間のなか全てに存在する欲望、欲求の具現化みたいなものっぽいので、まあ舞台のありとあらゆる場所にいるのですが、その場その場の김지철さんのキャラクターの振り分け方があまりにうますぎて舌巻きますよ。あと欲望の擬人化だからなんですかね??めちゃくちゃ胡散臭いときも理想の紳士の時も品作っとる時も基本的に大変えっち…セクシーすぎてこんなドえっちお兄さんに振り回されて(??)ヘンリーの情操教育大丈夫?!(大丈夫じゃない)って感じ。ビックリした。

H氏はその場その場でその人が一番言ってほしいこと、望むものを与えてくれる人物ですが、それが人間をめちゃくちゃにしてしまい、時には脅し、最後には嘲笑して去っていく酷薄なメフィストで、ヘンリーは最後の最後に彼を振りきって自分を取り戻し、サミュエルは多分最後までその魅力に抗えず閉じた世界に籠ってしまう、という感じでした。私は登場人物のメフィスト的というか、宿命的なキャラクターがめちゃくちゃ好きなんですけどH氏、あまりにメフィストとして百点満点すぎる。ヘンリーに対しても彼に顔を向けてる時は優しい魅力的な表情なのに、ヘンリーが見てない時はめちゃくちゃ冷たい顔見せてる時が割とあって、あー!!悪魔的すぎる!!最高!!(??)ってなります。人間は信じたいものしか信じないので、悪魔が冷たい顔を向けてる時は、正に見てない訳ですね。김지철さん、悪魔としての抗いがたい魅力と説得力が満ち溢れていて、ヤバすぎました。それはそうと作家がペンを握った時、必ずイマジナリーどセクシーお兄さんが現れて望めば生涯側に居てくれるって、凄すぎんか??因果な職業だな…あと、김지철さん、『ブラザーズ・カラマーゾフ』のost1のアリョーシャなんですよね…ost2のアリョーシャ김준영さんも『DEVIL』の続編でBLACKやってるらしいですが、アリョーシャ達、あんな聖職者の清廉さに溢れてたのに悪魔にもなれるんですか??才能が怖い…

 

とまあ、あれこれ感想(?)を吐き出してきましたが、やはり全体的に創作とは、というテーマをかなり突き詰めてよく考えたミュだったと思います…アプローチはそれぞれですが、『インサイド・ウィリアム』しかり水曜に配信した『蘭雪』しかりなんですが、めちゃくちゃ「ものをつくる」ということに対して向き合ったミュ、多いですね…すごいことだ…

あと、『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』は、小劇場作品の良さというか、コンパクトな劇場にセットをギチッと詰めて、最少人数で回す劇の良さがありました。特に舞台セットが簡素ながら良くできてて、ある時は劇場になりある時はヘンリーの部屋、野外にもなるという照明と緞帳、わずかなセットで様々な場所に行ける没入感も良かった気がします。その良さの続きというか、作品冒頭のH氏の口上のあと、ヘンリーとサミュエルが自己紹介するんですが、「ヘンリー役」、「サミュエル役」って言ってるんですね。最初訳出ミスなのかと思ったんですが、最後にヘンリーがフランスにいるとこで、「~っていう終わり方は?」(ヘンリー)「それはどうかな」(H氏)、みたいなやり取りがあり、エンドロールで三人が物語の真実性、みたいな話に触れて終わるって構造なので、最後に初めて、このミュージカル自体が劇中劇みたいになってたことがわかるんですよ…え~、めっちゃ面白くない?!ってなりました。最初のH氏の口上と最後の三人の曲にちゃんと幕があるので、「アイアランド贋作事件」の劇だったんだ!ってのがわかる構造になってるんですな…上手いわ…劇の題材が「シェイクスピアの贋作事件」ってのも、演劇界にシェイクスピアが与える影響力の大きさみたいなものがわかりやすくて良かったです。正に、「シェイクスピアの真作か、それとも贋作なのか…それが問題だ!」ですね。

渡韓顛末記第三日目〜景福宮からソウル駅、帰国まで〜

2日目夜〜3日目朝のこと

例によって二日目ミュ後の事を。ブカマを終えてあまりにも陰のエネルギーを充填され、ちょっとした異様な興奮に溢れながら会場を後に。ホテル近くで夕飯を食べようぜということで東大門歴史公園駅に毎度おなじみ地下鉄で戻りました。夕飯前に一度は近くで見てみたいぜと東大門デザインプラザに寄ることに。駅前にあるので、外観が好き……ってずっと思っていたのですが、実際夜に行くとめちゃくちゃSFチックでと~っても好き。スタトレに限りませんがSF大好きオタクなので、近未来チックな建物、大体好き。夜だとライトの関係もあって、メチャクチャSF感マシマシなので、夜が特にお気に入りだな……ってなりました。

 

 

東大門デザインプラザ

 

そんなこんなで夜景に?満足したので、携帯で調べた地図を頼りに東大門の近くの目当てのお店に向かいますが、どうも全然見つからない……それっぽい周辺をぐ~るぐる回るも全然見つからず(その代わりにパック屋さんを見つけ衝動的にマスクパックを大量買いした)、結局その店は諦めてチキンを買ってホテルで食べることに。韓国のチキン、一度は食べてみたかったので全然良かったのですが、この買い物がこの旅最大の失敗を生む……もう何度言ったかわからない韓国、ご飯の量が多いってのをまたしても失念して、それぞれチキンを一つずつ選んで10分ほど待つと袋に入れて店員さんが渡してくれたのですが、もうその時点でアッ……ってなる。どう考えても一箱二人で満足できる量のボックスが二つドンと重ねてある。これはマジで今回は食べきれんかもしれない……とおののきながらホテルに帰り、案の定凄い量のあるチキンとご対面することに。コーラと箸休め的なパックも一つずつ付けてくれている。とってもサービスがいい……あとね、箸が四膳ついてました。(そりゃね、この量二人で食べると思わないよね!!!私もびっくりしました)もう明らかに無理めの量ですけどとにかく美味しそうなのでいただきましょうということに。チキン、衣はザックザク、中はジューシーでメチャクチャ美味しい。熱々なのも手伝って結構何個でもペロッとイケます。他のチキンもまた試してみたいね……とはね、言いますもののね……やはり限界がありますよね、はい。多分、各箱の半分以上は食べたかな?って感じのとこで流石に限界が。これはもう無理だわ……ってことでとりあえず翌日の朝ご飯にすることにして寝支度を。結果的に翌日再び頑張って、最終的に四分の三までいけましたが、それ以上は申し訳ない……泣く泣く諦めました。ちなみにめっちゃ余談かつアホすぎる話なんですが、付け合わせについてたパック、実際は大根のピクルスみたいなやつだったんですが、透明な液体の中に白い四角いなにかが浮いてるのをみて、ナタデココ!!!って思ったんですよ。完全にナタデココだと信じて、食後にちょっと口直し……と思ってパッケージあけて中の液が溢れそうだったので吸ったんですよ……もうその瞬間にすっっっっぱ!!!!?ってなりました。今思うと全体的にあまりにも頭が回ってなかったなあと思います。多分自分が考えてた二倍くらい普通に疲れてたのだと思われる……旅行中のテンション、結構怖いよね。

 

3日目朝、景福宮とアルムダウン茶博物館へ

朝食も無事に(?)済ませたので、三日目の観光に。最終日はミュの観賞がないので、ゆっくり観光しつつ、お土産等を買う時間にすることにしました。まずはとにかく初渡韓中必ず行こうと決めていた景福宮へ。ほんとはアルムダウンから行くつもりだったのですが割合朝早めに行動を始めたのでまだアルムダウンは開店時間ではなかったため、景福宮を先に行く事にしました。アルムダウンから行くつもりでそっちの最寄りについたため、多分ちょっと遠回りをして徒歩で景福宮へ。途中よったコンビニで旅行中気に入ってしまった歯磨き粉を見つけてめっちゃデカいチューブのやつ(しかも1+1、一個だけレジに持って行ったらわざわざもう一個持ってくるように教えてもらえた)を買い、なんなら歯ブラシまで購入して鞄にアホみたいな大きさの歯磨き粉チューブを二本も突っ込んだまま景福宮へと到着。景福宮、もう遠目から見ただけでも圧巻で、め、めっちゃ韓ドラの時代劇とかで見たやつ~!!!ってなる。楽しい。

 

 

景福宮

 

そして景福宮、日本語ガイドが借りられるのでいそいそと借りて入場することに。各スポットについてとっても丁寧な解説を聞きながら、回れるのでメチャクチャお得です。それで聞きながらわかったことなんですが、まあそうだろうなとは思っていたのですが、現在の景福宮は復元らしいですね。大半の部分が日本の占領時代に焼かれたり潰されたりしたものを、発掘したり復元したりして今の建物になっているみたいでした。驚くほどろくな事をしていない……まあ近現代史をちょっとでも真面目にやってればそうだろうな、とはわかるところなので驚いたというよりそうだろうな……という暗澹たる気持ちになっただけなのですが、やはり日本人この辺りの歴史真面目に学ばないとあかんな……と思います。それともう一つ、景福宮はそうやってめちゃくちゃになったところを一から復元して、まだ今後もわかる限りは保存、復元していくと解説されてましたが、こういう文化財の保護方針や都市計画に際する近代建築と文化的建築のバランスの取り方諸々、非常に韓国が目指すところがわかりやすくて、明確に考えて国ごと取り組んでるんだな、と感じ取れるのは純粋に凄いな……となりました。

あと、韓国は素焼きレンガ(?)の文化があるらしく、可愛い装飾や色のタイルが壁面を構成してたりするのもあんまり日本にはなさそうな色遣いだったりで見応えがあり、途中に元は堀(?)らしき場所(禁川らしい)にキモかわ系の石像なんかがあって、獬豸だ~!!ちゃんと水辺にいる!!ってなり、こういうあたりやはり東アジア圏だな〜同じ文化圏に属している!って感じがしました。韓国では「ヘテ」というらしいですね。可愛い。何れにせよめちゃくちゃ良い体験をしました。文化遺産は楽しい。あとあと、景福宮は入り口あたりで韓服レンタルっかをやっており、色々な韓服の人々が至る所にいるのでそれも見応えありました。ちびっこ殿下とかがトテトテ歩いてたり、グラサンに自撮り棒携えた武官の装束の兄ちゃんがいたりしたのも趣深かったです。韓ドラで見たな!!っていう教房みたいな建物の前にこれまた韓ドラで見たな?!っていう格好の人々なんかがいたのも楽しかった……

 

 

景福宮の壁

 

可愛いやつ、「ヘテ」

 

という感じで諸々楽しみ、めちゃくちゃいっぱい歩いたので今度はアルムダウン茶博物館へ向かいます。博物館とは言うものの実際は茶器の展示などをしてるカフェ、みたいな感じなのですが何を隠そうお茶がまあとにかく大好きなので同行者共々めちゃくちゃ楽しみにしておりました。景福宮から再び歩いて2,30分程、ちょっと辻間違えたりもしましたが、無事アルムダウン茶博物館に到着でございます。こぢんまりした玄関から入ると入り口すぐがショップ、その奥に茶器の展示ケースと韓屋っぽいつくりのカフェスペースが広がってます。茶器など眺めた後いそいそと席に着くとメチャクチャ日本語が堪能な店員さんがお茶の説明をしてくれる……とりあえず暑かったので冷たいのが飲みたいねと思い、アイスがおすすめと聞いたオミジャ茶を頼みました。これがね、メチャクチャ美味しくて、オミジャ、「五味子」と書くんですが、所謂五つの味がする実、ということらしく、透き通った赤色が綺麗な飲み物で、ホントに甘さと爽やかな酸味もあるし、最後にちらっと苦みが顔を出す。すっごく気に入ったのでこれ絶対買って帰ろうと思ったのですが、あいにく瓶がその時売り切れていたようで、泣く泣くこちらは諦めました……残念すぎる。次は絶対買うぞ……!!

 

 

オミジャ茶

 

そして一息ついたので今度はホットを飲みたくなったので、韓国伝統茶らしい青茶を頼みました。春先、雨が降る前に収穫した茶葉だけで出来たお茶らしく、「雨前」と名のついたお茶を頼んだのですが、初めて飲んだ韓国の青茶、香りが凄く爽やかで清涼感があり、まろやかであっさりしている。これが滋味深いという事…!!!という感動を味わいながらしぶとく四煎目まで粘りました。ちょっと意地汚さが過ぎます。美味しかったんだもの……とまあそんなこんなで美味しくお茶をいただきまくって、ショップでもしこたま茶葉をお買い上げし(勿論「雨前」を買った)、ウキウキでアルムダウンを後にします。後はお土産を買って帰るだけになりました。

 

 

雨前茶

 

お土産購入~帰国

お土産前に、とりあえず空港の事前チェックインしようということで、ソウル駅に向かい、ヨタヨタと彷徨いながらも無事チェックインカウンターを発見。行きの空港のあのクソ長待機列はなんだったのかと思うほどスムーズにチェックイン出来、ついでに出国審査までができてしまう。あとは空港着いたら専用レーンに行けばサクッと行けるとのことで、デケえ荷物も手放した身軽な人間になれたのでいざお買い物へ!マジで事前チェックインシステム良過ぎたから今後とも宜しくしますわ……

とりあえず人様へのお土産等々と家族、自分用を買わなきゃなという事で、ここで友人分の土産の為に渡韓初のオリーブヤングへ参ります。いや、オリヤン、めっちゃ楽しい。色々ある……まあ流石に自分のコスメは前日アモーレ聖水で買いまくったので、グッと理性の手綱を握って無事友人達へのプレゼントを購入。ムジゲマンションめちゃ好きなんだけど韓国内だとあんなお得に買えるのね……

そしてお次はソウル駅にあるというロッテマートに参ります。初めて行ったんだけどめっちゃデカくて楽しいねロッテマート。韓国海苔があんなに沢山壁一面に並んでるの、初めて見たよ……しかも何買えば良いかわかんないからオタついてたらちゃんと店員さんがおすすめを教えてくれる……別々の店員さんから違うスナックの海苔のお菓子を薦められてええいままよとばかりにどっちも買ったりしました。箍が外れている。しかしどちらも美味しかった……母に絶対買ってくるよう頼まれたハニーバターアーモンドとその仲間達みたいなのも買えたし全然見つからなくて諦めてたひまわりの種チョコも無事ゲット。これで母にドヤされることも無く帰国出来ます。ていうか初めて知ったんだけどハニーバターアーモンド、あまりに人気で一角全てが仲間達でいっぱいだしなんならあの可愛いキャラクターのぬいぐるみまであるんだね……ちょっと欲しかった……

とまあそんなこんなでしっかりお土産も買えましたので、いよいよあとは空港に向かうだけですが、最後にWOWPASSのチャージ分の使い切りがてら昼ごはんやらおやつやらを物色することに……とりあえず美味しそうだったのでソウル駅構内の定食屋さんみたいなとこでユッケジャンを食べ、メニュー決める前に当然の様にキムチとかと一緒にご飯来るの凄いな……という謎の感動などを味わいつつしっかり完食。ユッケジャン、ちょっとピリッとしてて食が進むしスープが美味しいね……辛いもの大好き。

 

ユッケジャン

そしてお次はおやつよという事で海外ではミスドよりあるらしいが日本ではついぞ見た事がなかったから大層気になってたダンキンドーナツへ。ちっさいドーナツ二つ買ったんですが、ふかふかだしそんなめちゃ甘くも無くこれがまた美味い……私実は日本ではクリスピークリームドーナツ派なんですが、これ日本にあったらちょっと迷うな……と思いながらペロッと完食。ついでに近くのコンビニでKTX鉄道くんのキャラみたいなのが書いてある可愛いカップのアイスアメリカーノも購入。大分お腹がいっぱいになり過ぎました。そろそろ空港向かいます。

あと、余談ですが実は行く前からマッコリの美味しいやつがあったら試したいなと思ってて、なんかコーヒーみたいに紙カップで渡してくれるマッコリがあって美味しい、って見かけたので多分そのお店っぽいのに行ったのですが、残念ながらソウル駅のお店はカップ提供やってなくて、一瓶ずつの購入だったので泣く泣く諦めました。流石にいけなくは全然ないけど帰国前にマッコリ一瓶ラッパ飲みして帰るのはあまりにもな……次行った時にお酒はゆっくり探そうと思います。

ダンキンドーナツ

 

アイスアメリカーノ

 

はい、というわけでもはやこの旅も終盤も終盤、再び鉄道で仁川国際空港へと参ります。この途中一つ嬉しい発見があって、行きし、砂地が隆起してぽこぽこしたものがいっぱいあるな〜と思っていて、あれはもしや干潟かしらと見た感じから思ってたのですが、やはりそうだった様で帰りには満潮になっており遠くに小さな島が浮かんでいてめちゃくちゃ風光明媚である。予想も当たったし良いものも見れて大満足。ちょっと「別れる決心」みのある風景だな〜など思いながら楽しく空港まで乗れました。

仁川への途中

あとはもう滞りなく手続きを終え、帰国の途についたので特筆することもありません。あ、帰りの飛行機もコチュジャンの小袋付き機内食はありました。今度はチキンカツがご飯に乗ったやつにコチュジャンつけて食べたんですが、あれも良かった……食べることに余念がないのでマジで食べては観劇、食べては観光みたいな旅でしたが、初海外にしては目立ったトラブルもなく、楽しめたと思います。ていうかめちゃくちゃ楽しかったよ……またすぐミュにも行きたい……という訳でダラダラと書いてた初渡韓記もここでしまいです。道中ずっと助けてくれたコネストやら様々な旅行サイト及び終始変なテンションだった私に付き合ってくれた同行者に多大なる感謝の意を捧げます。

 

ドラマ『シスターズ』感想~多様な女達と女と女の物語〜

Twitterシスターフッドの話だと見て以来、見よう見ようと思っていたドラマ『シスターズ』、遂に見たのですが想像の200倍良すぎてこれはもう絶対このパッションを書きとめないといられないと思いまして、以下とりとめも無く感想をだらだらと続けます。時系列等はちゃんと纏めてないマジでとりとめもないやつなので悪しからず……

 

女と女の物語として

そもそも『シスターズ』を見るきっかけになったのが、シスターフッドの物語という触れ込みだったのですが、実際の所予想を遥かに上回りマジで徹頭徹尾女と女の関係を丁寧に描き切った作品だったと思います。

このドラマ、貧困に苦しむ三姉妹達が、長女が莫大な金を手に入れてしまうところから社会の闇に巻き込まれていく話なのですが、もちろん登場人物に男性キャラクターは多々出てくるし主人公達の足を引っ張ったり助けたりはしつつ、最終的に物語を始めて終止符を打つのは女達なんですよ…男性を介さずに生身の女と女が向かい合い折衝し対立し、自分達の物語を成立させる、この話の主眼はそこにかなり意識して置かれてるな〜と感じました。

あと、女女の物語を扱う上では避けては通れないというか扱わずに済まされない家父長制の問題についても『シスターズ』は真っ向から扱っていて、事件のキーアイテムである「青いラン」は「父の木」と呼ばれる木に寄生しない限りは長く生きられないという説明がされてます。このランを中心に構成された「情蘭会」の会員は、「父の木」にランを据えてもらい会の役に立つうちは成功を約束されるもののしくじればランは木から離され、自死をしなければならないというヤベエ会なんですけどこれもう正に家父長制のメタファーですよね。作中次女インギョンが尊敬する上司が実は会員だった事を知らされた時、「立派な父がいれば苦しむ必要はない」と言われるんですが、これこそ正に家父長制の仕組みというか、強く恐るべき「父」の下で他人を蹴落とし役に立つなら成功を約束されるが、弱者になればすぐさま切り捨てられ顧みられる事もないという本質を示唆するわけですよね。ここでインギョンはハッキリ「そんな父は要らない」と上司の発言を否定するのも最高。基本的にこのドラマは家父長制を否定し、最後はサンアとインジュ、ファヨンの対決を経て「父の木」はその組織の中でがんじがらめになったサンアと共に滅びてしまう訳で、あからさまに女達が家父長制と手を切る話じゃん……となりました。

 

オ・インジュという女

あのね…いや私メチャクチャにオ・インジュが好き。三姉妹の長女、インジュは金が好きで金があれば家を買い幸せに暮らす事が出来るはず、という考えをもってる現実思考の女なんですが、実のところインジュの金が好きという話、金が好きというか「金がなければ死ぬ」という切実な理由から来ている。実際インジュは貧困の為に命を失った妹がいて、彼女が成長して生計を支えられるようになっても、やはり貧しい故に妹に安定した生活をさせてやれないし夢を与える事も出来ない。インジュの言う金銭への志向は実際全て長女の自分が妹達を幸せにしなければという家族への目線に下支えされてるので、作中案外本人自体、人並み以上の金銭欲はないんだろうな…と思いました。しかも金と男に執着すると言いつつ過去の結婚は金のためで持ち家がある男だと思ったからという……妹の生活に捨て身すぎる。

んで本人、自分に得意な事は無く、ただ金銭欲があり昔から男に好かれる事くらいじゃないかと言ってるんですけど実際多分まあ目に見えた特技は確かに無いんですが、オ・インジュという女、どこまでも生活に基盤を置いた女というか、生きる事と自らの目的に対する取り組みの懸命さという部分に滅茶苦茶長けた女なんですよ。インジュの目的は実際最初から最後まで姉妹の幸福と自身に金を残して死んでしまったファヨン先輩の死の真相を明らかにする事に終始していて、マジでブレない。このブレなさが彼女の強みで、姉妹と先輩の為に正に自身の命を投げ打って事にあたる人間な訳です。彼女自身はそういう若干現実的といえば聞こえいいけども俗すぎる欲望への志向とか妹達のように勉強が出来たり才能があったりという訳じゃ全然ない人間だっていう自分を長所がない鈍感な人間って評するんですけど、インジュが自身と何より大事な人間の幸せな生活を追求し、一番生活に貪欲であるからこそ異様にメンタルが強く打たれ強い女だってのは割と直球で彼女の主人公性の表れだよなーと思いました。強い正義感や秀でた才能は無い、ただ自身とその手が届く周りの為だけにならいくらでも自分を投げ打てる現実的な生活者としての主人公、っていうのがインジュの1番の強みでその辺りの爆発的な魅力にどハマりしたのがファヨン先輩しかりドイル氏であり、サンアでもあったんだろうな〜と思います。あんな忠実な生活する女、なかなかいないよ……あと、インジュがあくまで生活に基盤を置いた人間だからこそ窮地に際して誰かのために若しくは自分自身を守る為に覚悟も座るし結果的に窮余の一策を見出すのでやはりインジュは生活者じゃ無いとダメなんですね。サンアにすれば「希望という病気に取り憑かれている」らしいですが、インジュの志向は自身と周りの少しでもより良い生活に一心に向けられてるのでそれが結果的に強いんでしょうね。彼女は生きる為に闘う女なので。そしてそうやって捨て身で駆けてく女だからファヨンやドイルが手を貸そうとするし。最終的に大叔母さんがインジュに漢江の見える家を残してくれたのも、インジュと大叔母が共にやっぱり生活の為に闘う女だからと言うか安心できる家があればまた明日も生きていけるって考えの人間、そりゃ姉妹の中じゃインジュだけだもんね。それこそかつては自分に似てて痛い目に遭う未来が見えるが故に嫌いだったけど、成長したインジュになら託したいと思うだろうな〜と。

ていうか『シスターズ』、シスターフッドの話では勿論ありますが、女女のロマンスの話でもありますよね??作中ロマンスと呼べるとすれば私は間違いなくファヨンとインジュ、イネとヒョリンだと思いました。あ、勿論インギョンとジョンホは異性愛ロマンスであれはあれで可愛かったんですが、2人の女の間に流れる特別な関係性の描写がうますぎませんか??イネとヒョリンは互いに孤独な少女が2人だけの世界を得て信頼で結ばれ、手を携えて駆けていくっていう所謂ボーイミーツガールでは良くあるロマンスのガールミーツガール系で、あの2人が最後までちゃんと互いを離さず一緒にいたのがめちゃくちゃ良い……あと最終盤のマジ泥沼展開になる前に2人が船出して子どもは安全なとこにいるべきよね、みたいにしてもらってたの、ドラマの配慮を感じて良かったな……

まあ本題はファヨンとインジュなんですけどね???あの2人ヤバすぎません???あれを愛と言わず何と呼ぶの??ファヨン先輩はまあ突然720億ウォンをインジュに残して謎の死をとげ(死んではなかったが)、インジュはその死を追いかけ巨大な事件に巻き込まれるんですけど、あまりにも互いが互いに対して命を駆けあうんですよ……ファヨン先輩はインジュの幸せを願って巨額の金銭を送り(何なら韓国で3足しか無い靴もあげた)、インジュの危機を知れば自分を犠牲にして庇い全てをインジュにあげようとするんですけど何……??しかもなんか会社ではインジュにハブ同士付き合うと碌な事ないよとか言いつつ(とは言え普通にめちゃくちゃ世話焼いてる)割とありとあらゆる人にインジュの事べた褒めしまくっている……わざわざサンウに蘭にかこつけてインジュは今は地味でも花がひらけば誰より輝くはずって言います??愛じゃん???インジュの事ずっとお姫様だと思ってたんだよね???まあわかる、インジュは大胆だし可愛い。ファヨンオンニ、私と同担だね(???)。そしてさ、インジュもファヨンの信頼に全力で応えるというか多分ファヨンが思ってた何倍もファヨンが好きなんですわ……ファヨンはインジュが20億ウォン受け取れば後は自分を忘れて幸せになるはずだと思っていたんですけど、インジュはファヨンの死を追いかけ続け、命の危険を冒しても先輩に会いにシンガポールまで行くんですよ……ラン競売で泥棒姫競り落として先輩の姿を探すインジュの必死さ、凄いんですよ……そんでファヨンが生きてたと知った時の激情……私は先輩の死の真相に迫る為なら命を懸けられたって直で言いますん……??ファヨンとインジュは依存し合う関係では無いし互いに寄りかかるような感じでも無く、ただ互いの為に命を懸ける事ができる間柄だってのが良すぎるんですわ……ファヨンは知らなかったけどインジュはとっくの昔にファヨンの為に命を懸けられるんです……ファヨンがインジュの為に全て投げ出せるように……そして極め付けがサンアの誘いに乗ってファヨンを助けに単身サンアの家に向かうインジュ…3人で心中するつもりのサンアの策略でスプリンクラーから塩酸の雨が降り注ぐ中、ファヨンを助ける為に持ってきた手榴弾を使って鉄の板を手にし、それを傘にファヨンに駆け寄り助け出す訳ですよ……もう、こんな劇的な展開……ロマンスじゃん……私がこのシーン何が好きって1つは人間を殺傷する目的で貰った(渡したチェ・ヒジュ氏は作中1人なんか違う映画の人じゃんという雰囲気でウケた。1人だけセガール沈黙シリーズとかみたいだった)手榴弾をファヨンを助ける傘を作る為に使った事、後はやっぱり結局ファヨンとインジュをどちらも救ったのはインジュ自身であって、追っかけてきたドイル氏ではなかった事だよね……徹頭徹尾女と女が自分達で全て片をつけて自分達で守り合ったのが良かった……最後、ムショで面会する2人の手にフォーカスしてたの、2人の手が塩酸で爛れてるのを見せてその関係性の特別さを表す演出なんでしょうがもうあんなロマンチックな事無いじゃん……

んでね、ドイル氏には悪いんですけどチェ・ドイル氏の存在がファヨンインジュ感のロマンスラインを際立たせている……いやマジでドイル氏はめちゃくちゃいい男なんですけどね(インギョンの言う、資金洗浄のプロはまともな男ではないについてはマジでそう。それはそう)。ドイル氏、あんな金の亡者とか言われてたのに実のところインジュにベタ惚れじゃないですか……インジュが好きかどうか賭けの対象にまでされとる冷血漢()ドイル氏ですが、そりゃもうインジュの為にマジで彼は彼でありとあらゆるものを投げ打ってくれるんですけど、実のところインジュにはこれがあまり伝わっていない……インジュは彼を親切な人だからと思ってるんですわ……まあインジュが正直ドイル氏にロマンスしてる場合じゃなかったのもあるが……しかしやはり前提としてインジュの向かう先はファヨンオンニなのでドイル氏に向かうわけもないという話なんすわ……ドイル氏、めちゃ健気なんよ……シンガポールではインジュにいそいそ自分セレクトのお洋服とアクセでオシャレさせて(みんなが思うインジュの服とかいうてましたけどアレはほぼ間違いなくドイル氏の趣味)、インジュから不信感ぶつけられても正直僕だけを信じて欲しいけどといいつつ銃を渡すし結局逃げられたのに必死に探して助けに来るし……なのにメチャクチャんなったインジュを膝枕しながら言われたのがドイル氏を信じてなかった訳じゃなくてただ一目でいいからファヨンオンニに会いたかった!ですよ。もうさ、ドイル氏の気持ちよ。勝てる訳ないじゃんね……しかも最後も結局インジュを安全な場所に連れて行こうとしてるのに結果的にファヨンの為に置き去りにされ(まあこれは単にインジュがファヨンの為にドイルを巻き込むタイプじゃないのもある)、再び必死で追いかけたけどコ室長と戦ってる間にインジュは自分で片をつけてくる。インジュからドイル氏への明確な裏切り(?)は2回ともファヨン先輩の為なのよ……こんな感じなのでドイル氏は別れ際もまた会おう、とだけ伝えて去ってくしかないし……インジュはよくわからん顔してたし……ドイル氏、割と初対面からおもしれー女、オ・インジュに加速度的に惹かれてたっぽいですけど、インジュを見つめれば見つめるだけインジュが向き合う相手がファヨンだとわかるから、あの距離感で留めたんだろうな……百合に挟まる男じゃんとか思ってごめんな……まあ完全に構図はそうだけどドイル氏はいい男だよ……資金洗浄はするけど。

 

多様な女達の物語

ちょっと最推し(?)オ・インジュについて話し過ぎたんですけど、『シスターズ』の魅力は勿論インジュに留まらず、マジで色んなタイプの女達がいて、彼女達の関係性が丁寧に描かれる故にめっちゃ良いケミが発生してる事なんですよ。本当に女の造形が多様。ある意味既存のヒーローらしくはない正義感も強くない俗で秀でた特技もないが生活者であるインジュを初め、正義感と意思の強さ、そしてやっぱり人間らしい欲を抱えた次女インギョン、才能に溢れ姉達の愛に潰されるのを恐れ自分が姉達の未来を潰すのを嫌がって別の世界にヒョリンと旅立つ三女のイネ。恐るべき敵でありながら哀しいモンスターでもある狡猾かつ享楽的なサンア。怪物のような両親の元に生まれ、自分を殺さない為に家族を捨ててイネと旅に出るヒョリン……それで私の結構お気に入りなんですけど圧倒的暴力女でマジで多分人間の事サンドバッグだと思ってる節が絶対ある暴力を愛する女コ室長などなど他にも様々色々な女達がいて、その全てが丁寧に描かれてるんですよね。コ室長周りが特に意識的な気がするんですが、この暴力特化人間のコ室長、あまり既存の女性キャラクターに与えられる造形ではないというか明らかに典型的な男性キャラクターに振られがちな造形だったと思うんですよね。室長、まずもって全ての解決手段が大体暴力が選べそうなら暴力を選ぶという本質的に暴力を愛する性を持ち、反面上司には忠実で部下に対しては割と思いやりのようなものがある。結構男性登場人物にはあり得そうなキャラクターを女がやっていて、彼女に相対する形でドイルが暴力(武器)を嫌い、出来うる限り暴力行為を避けようとする男っていう造形も面白いなと思いました。あとね、室長がやたらめったらドイル氏がインジュの事好きなのか気にするの、端的におもろい。ドイル×インジュが推しか??なんなら最後の戦いですらオ・インジュが好きだから来たんだろう??などと質問をし、ドイル氏から「そう思うなら邪魔しちゃダメだろ」というめちゃくちゃなど正論名言を引き出した功労者でもある。何?そんな気になります???まあ、普通に考えると室長はドイル氏を自分と同じ他人に愛情を与えるような人間ではないとみなしてたが故の理解できなさだったのかな〜とも思うのですがとりあえず面白かったので。

あと、造形的な話で言うとサンアとジェサンの夫婦も結構ステレオタイプとは逆っぽいと言うか、父権的な力の象徴みたいな登場の仕方をしたジェサンが実のところサンアの思惑のままにサンアへの愛で行動していて、サンアから死ねと言われたら愛のために自死を厭わない人物なんですよね。父のために死ぬ母はよくありますけど母の為に死ぬ父ってよほどの英雄的文脈意外だとあんまりないかな〜という感じ。しかも愛のために。しかしサンアはジェサンの為には死なないけどジェサンはサンアに愛を捧げて死ぬし、実際的に「父の木」を握っていた家父長制組織のトップにいたのがサンアであってジェサンではないってのもおもしろかったかな。

あ、あと、このドラマ、若草物語の翻案(?)らしいのですが、造形もかなりそういう部分を意識しつつ、現代的になってたり良い意味で原作を裏切ってるのも良かった。そういう点で言うと若草物語では最終的にエミリーと結婚するローリーにあたるジョンホが、ジョーに当たるインギョンを献身的な支え続けて愛に行き着くのも良かったですし、原作では大叔母さんからジョーが遺産を継ぎますけど家を実際譲られたのは叔母が嫌っていたはずのインジュだったりとかいう細かいけど原作ファンだとわかるしへえ〜ってなる展開だったのも良かったです。インジュは漢江の見えるあの家で、先輩の出所を待つんでしょう。

渡韓顛末記第2日目 ~大学路でブラザーズカラマーゾフ鑑賞編~

大学路へ

この旅最大の目的、大学路でのミュージカル観劇の記録になります。益善洞を後にし、おなじみの地下鉄で大学路のある恵化駅へ。韓国、ソウル駅その他にもミュの広告がデカデカとあって、テンション上がるんですが、恵化駅はさすが劇場街ということもあって他の駅より格段に広告も多い。既にテンションぶち上げの民と化し、まずは劇場の場所を確認するために駅構内にある大学路のマップを見ることに。これ見て初めて知ったんですが、大学路ほんとに広い。いや、元学生街を劇場街に利用してるというのは知ってたんですが、劇場が建ち並ぶ町並みというのが想像出来なさすぎてもっと規模が小さいものかと……でも実際行くとマジで至る所に劇場がある綺麗な町並みって感じでした。1.6㎞もあるらしい。圧巻。(USJの綺麗な通りみたいな雰囲気だった)美術館とかも多いらしく、次行くときはもっとゆっくり色々見て回ろうと思いました。

ともかく劇場の場所はなんとなくわかったので、そこからはスマホの地図頼りに通りを物色しつつ劇場まで。ホントに小劇場が至る所に立ち並んでおり、気になるタイトルも目白押しだし(今めっちゃ見たいなと思ってた海賊もやってた、見た過ぎる)、おしゃれな飲食店や雑貨屋さんも軒を連ねている。目移りしながらもしっかり劇場のあるビルに到着。本日の会場、YES24 Stageでございます。

 

作品ポスター、ゴッホもちょっと気になっていた

 

劇場自体は地下にあるらしくとりあえず地下に向かい、チケットボックスを確認。(後でわかったのですが、私がこの時確認したボックス、まさかのブカマの上でやってるゴッホミュのだった。ちゃんと文字読んどけよというね。本当にそそっかしい人間でございます)ひとつ下の階で物販をやってるみたいだったので、チケボは開演1時間前に開くのか確認しがてら下に降りてみる。物販のお姉さんにまたしても覚束ない英語で質問したところ開演1時間前にチケボ開くので大丈夫そうということで劇場を後に散策へ向かいます。ちなみに物販はまだ開いてませんでした。そりゃそう。6時開演で3時頃に物販あくのは妙だなとは思いました。全然冷静な判断力が存在してないですね。まあこの旅ずっとそうです。

気を取り直して(?)散策に出ることに。昼ご飯がかき氷だったので(二日目前半を参照)、カフェなどで腹ごなしをしたいよねと思い、よさげなカフェを物色。大通りの町並みがマジでUSJの雰囲気のよいストリートっぽくておしゃれじゃんなど感動しながら歩いていると、明らかにミュージカル俳優DAYみたいなのをやってるカフェを発見。もうね、ここに決めます。メニューも美味しそうだし。ピックアップされてる俳優さん、何かめっちゃ見たことあるなと思いながら入店し、店内に飾ってある写真を見ながら注文も無事終了。通りの見える窓際の席を確保できました。

 

大学路の通り

 

カフェ



美味しいマドレーヌを食べながら、この俳優さん、エドモン・ダンテスやってるし、フランケンのアンリ、キンキーのローラも??しかもベンハーやってる……???めっちゃ見覚えはある……って悩んでたんですが、お手洗いに立ったときモーツァルト!のヴォルフガングやってるのを見て、あ~!!!?見たことあるはずじゃん!!!パク・ウンテ氏だもんね!??ってなりました。そりゃあ見覚えがある。当たり前である。というか韓ミュといわず、アイドルとかもっぽいけど、こういうイベント(?)みたいなやつあって良いよね……私の韓ミュ最推し、ミン・ウヒョクDAYとかありますかね……こないだ撮影でコーヒーカー(?)作ってもらってるのは見たよ……という訳で入店以来の謎も解けたのでスッキリしてカフェを後に。(本当に余談ですけど私たちの座った窓際の席、ウンテ氏のコーナーが横にあり店の前とかから皆さん撮ってらしたから他のお客さんが座ってなかったっぽい……休憩中しょっちゅうお客さんが店前から写真撮ってたので気付いたよ……ごめんね、邪魔な観光客が写真に映り込むねここにいたら……ってなりました。反省したので次はやりません。ひとつ賢くなったぜ)

チケボが開くまで後30分ほどなので、劇場に戻りながら気になってた文具屋さんへGO。私は仕事柄もあり(と言っておけば許されると思っている節もあり)文房具が好きでよく買うのですが、韓国の文具も見ちゃお、という訳です。入ったお店は文房具オンリーという訳でもなく、雑貨やら何やらがいっぱい置いてありめちゃくちゃ目に楽しい。実は渡韓前、現地に行ったら欲しいものランキング堂々の一位にムジクタイガーくんがいたのでまずはムジクタイガーくんを捜索。いなかったので悲しみつつも文房具を見ました。(ムジクタイガーは韓国だと一体どこで売っているの……??通販ではいっぱい見ますがあの子は通販専門の方……??お菓子は見かけましたが……無念)韓国の文房具、蛍光ペンとかがいろんな形あってくすみカラーみたいな感じのもあり可愛い。しかし実は前日にも買ったので流石に2日連続蛍光ペン買うのもな、と思い、結局色々見て見ましたが何も書いませんでした。理性が強くて偉いね。

そして、再び劇場に舞い戻り、チケットボックスが開くのを待ちます。この時先に確認した場所がゴッホだということを知り、事前リサーチのガバさに絶望しつつも無事チケットを貰い、今度こそ物販へ。何を隠そうこの為に渡韓したと自信を持って言えるブラザーズ・カラマーゾフの2021版OST(なんと4枚組5000円ほど!安い!)と、つい最近グッズに並び始めたのはちゃんと知ってたプログラムブック(1000円ほどでめちゃ分厚い!破格すぎる!)を手に入れ最早開演前から意味のわからないテンションに。同行者も似たような感じだった為異様に昂った変な観光客2人組の完成です。

 

ブカマのパンフとOST

キャスボ



ジリジリと開場を待ち、シアターが開くと同時に入場。係員のお姉さんが韓国語で何かしら注意事項を話してくれてたんですが、全くわからず曖昧な微笑を浮かべとりあえず席に着く。(後でお手洗いに行った帰りにわざわざお姉さんが私を呼び止めてスマホの翻訳文を見せてくれました。撮影事項のお願いだったらしい。お姉さんありがとう。マジでちゃんと韓国語勉強します)ここで発覚したのですが確保した席、めちゃくちゃ視界が開けていて最高。ブカマ、ちょい爆音との情報をフォロイーさんから得てたので後ろめで取ったのですが、ちょうど通路が前にあるので背の小さい私でも全くストレスなく前が見渡せる!(いうて割とちゃんと傾斜があるので前に人がいてもそこまでストレスなかった気もしますが)チケッティング時の私は天才だったのでは?!など自画自賛しました。そうこうしてると、ふと会場からなにやらよさげな香りが漂っていることに気付きく……抹香っぽいというかなんというか……なるほどこれがTwitterで言われてた何やら良い感じのスメルなんだな~と事前情報のありがたみに感激。そしてこれは全然知らなかったのですが、会場、めっちゃくちゃに寒い。カラマーゾフを見るからには観客の感覚もロシアの大地に合わせないとね、みたいなノリ??ってくらいには寒い。極寒。一応観劇のためにショール持ってったから事なきを得たけど、隣の半袖のお姉さん、劇中三回もくしゃみしてらしたよ……会場の歴戦のお客さん達がしっかり防寒してるはずだよ……(会場、かなりの人数が歴戦のブカマリピート勢ぽかったです。客席で皆さんお互いに挨拶していらした。あと、噂のブカマポイントカードを押して貰ってる方々も一杯いた。凄い。私もポイントカード作ってブカマリピートしたい)

 

ブラザーズ・カラマーゾフ鑑賞

いよいよ、幕開けでございます。割とマジの極寒の中、若干不安になりながら開演を待ってると、劇場が青っぽくなり兄弟達が入ってきます。もうずっと異様な昂ぶりにあり続けたので正直様々怪しい記憶もあるのですが、以下感想となりますので悪しからず。あと私はドミトリー・フョードルビチ・カラマーゾフ推しと公言してはばかりませんので、この感想の八割はミーチャカメラ搭載者の妄言だと思ってください。

登場シーンから既にあのとき配信で見た光景……!!という感激で一杯だったのですが、まずびっくりしたのが、ミーチャ、めっちゃおっきい。ファーストインプレッションのほぼ全てがミーチャでっかい!!!で埋め尽くされました。スケール感がほぼ原作のミーチャ……最高……ミーチャはやっぱりおっきくないとね……曲が始まり棺を囲む兄弟たちが歌い出す……あのね、声圧がすっごい。びっくりするほど上手い。韓ミュ、レベル高すぎ。そして赤いガウンきたフョードルが入ってきて歌い出す。심재현さんのフョードル、去年配信で見たフョードルなんですが、生で見ると胡散臭いオッサン感が鰻登りで良すぎる。死んでいるのに元気で胡散臭い下町のオッサン、フョードル・カラマーゾフである。フョードル、全体的に全ての立ち回りが好きですが、やはり最後の俺を殺したのがお前達で良かった、に全ての良さが詰まっている。ブカマは本家本元カラマーゾフの兄弟より明らかに尊属を殺すこと、所謂父殺しへのテーマ性がおっきいのですが、あの部分があることで、全ての兄弟に父を殺す理由があり、全ての殺意が父を殺しそれを父は甘受したというあたりがヒシヒシと伝わる。ブカマにおける父殺しが神への挑戦とどれくらいリンクするかは何とも言えないんですが、まあでも多分兄弟達は父への殺意を自覚し、父を殺した事実を確認する中で神と対峙するわけですからやっぱり多少はあるかな??

ちょっと1人ずつの話をします……時系列をちゃんと追えそうにないから。

まずミーチャ役、양승리さんですよ。とにかく声がデカい。サイズもおっきくてめちゃミーチャ!って感じ。特に前半のミーチャ、粗野で享楽的、短絡的で人懐っこいがブチギレも早いというミーチャらしさがありました。ちょっと軍人らしすぎる感もあるんですが、ブカマのミーチャは全体的に軍人っぽい軍人らしさが皆さんあるのでこのミーチャもそうだなーという感じ。前半部特に狂態を極めていて、マジで乱暴だし破滅的に相性合わなさそうな오종혁イワンとの喧嘩もヤバけりゃヒョードルとの諍いも凄くてまさに荒ぶる男。圧倒的粗野。途中イワンのこと投げ飛ばすシーンがあるんですけどイワンがポーン、ゴロゴロってなるしその後スメルジャコフも凄い飛ぶしでサイズがでっかい男の暴力、という感じが迫真。しかし、ドミトリー・フョードルビチ・カラマーゾフの真髄は前半部の粗野さに重点がある訳ではなく、転向後の原罪を背負う目覚めたミーチャとの落差を如何につけるのかという部分にあります。この辺、양승리ミーチャは驚くほど絶妙にバランスを保っていて、ミーチャの転向を表す曲、"足のない鳥"はその寄る辺のなさへの不安や苦悩が非常によく表れていてこれがまあ凄い。あのあたりのミーチャ、背景に母に死なれ父に顧みられずに過ごした幼いミーチャが見え隠れしてとても苦しい。ミーチャは父殺しを見つめる過程において確かに存在していた父への殺意と自分の中にあると思っていなかった父に愛を求めた事実の両方に気付いていく感じがします。ミーチャの父殺しは割と、それが即ち神の再発見に繋がってる気がします。ただ、別にブカマにおけるミーチャによる神への目覚めは劇的ではなさそうかつ、あれは神を見たというよりなんだろ……彼の中に存在した信仰を再発見し、それが宿ったみたいな感じがするので神との対峙感は比較的薄めかな……ミーチャが向き合っていたのは基本父と己っぽかったのでやはり転向はどちらかといえば自身の信仰の再発見なんかな……ともあれ、"足のない鳥"を契機に前半の粗野さが一転、端正で凛とした、でもどことなく不安げな雰囲気がたまらんミーチャに……めちゃどセクシー……ちなみに前半部基本的には荒ぶり続けているのですが、父との諍いの時、父フョードルに煽りに煽られ銃を持ち出したものの撃つことが出来ず、父を殴って走り去る一連の流れがただの乱暴者のそれではないんですよ。ミーチャは父を殺したいほど憎んでるといいつつ、銃を取り出し父への殺意を顕在化させる段になって怯むんですよ……口では父を憎むと言いながら実のところ本当に父を殺す可能性を自分の中に見つけて割と愕然としたのではないか……??みたいな感じなんですよ……めちゃcute……そしてね、父との諍いを眺めて馬鹿笑い(マジで引くほど笑ってたよ)するイワンと揉めスメルジャコフと揉め再びフョードルとももみくちゃになるミーチャ、アリョーシャの嘆きで我に返って逃げ去るんですが、あの動揺と羞恥よ……ミーチャは基本的に粗暴ですがそれ故に純粋で非常に素直なので恥を感じるんですよ……あとね、양승리ミーチャ、配信で見た2回分のミーチャは最後の最終弁論の部分割りかし端正で凛然とした感じだったのですが、今回のミーチャは力強い。いっそ投げつけるぐらいの勢いで弁論をする。アレはアレでカラマーゾフを感じる。実は結構解釈が変わった感じだったのであとでOST聴いて気付いたんですが、양승리さんのミーチャ、私が初めてブカマをみた配信1日目のミーチャだったんですよね。去年の양승리ミーチャは転向以降の振り切れ方が凄くて、この世の全ての原罪を抱く人類の救世主としてのミーチャだったので、今回のミーチャとなかなか結び付かなかった。声フェチの部分の私はめっちゃ好きな声!去年の初回ミーチャと似てる!!(似てるも何も本人である)って感じだったんですが、まあほんと個人的には転向後のミーチャが結びつかなくていや凄いな…他キャストさんとの兼ね合いか一年たっての解釈の幅かはわからなかったんですがこんなに変わるか、と。割とこのミーチャ、原作のドミトリー・カラマーゾフを感じさせました。あくまで個人的な意見ですけど、去年2回見た配信のミーチャが1人は全世界を抱くミーチャで(こちらが去年の양승리さん)、もう1人はより弱々しく原罪を背負えるか…?!って感じの弱さがおしだれたミーチャ(これも良かった)だったんですが、今回の양승리さんは2人の中間っぽくて1番原作ミーチャを感じました。しかしどの解釈も良い……後ミーチャはフョードルを除けば1番低音かつ合唱になるとかなりの部分で下を支えてたり、作中驚くことにしっとり系ナンバーを2曲も持ってて曲目的には1番しっとり系だったりする男なので基本的に歌がべらぼうに上手い。양승리さん、特にめちゃくちゃ上手い。お気付きの通り去年今年を通じて完全に推しになりました。

あとね〜生で見てるので舞台がめちゃよく見えるんですが、ミーチャ割とめちゃくちゃ出入りが激しい。こんなに出入りしてたのね?!ってなりました。落ち着きのなさがミーチャっぽくて良かった。苦悩する姿や激昂の様子も具に確認できるのでやはり舞台は生で見るべき。再演早くしてください……

お次はイワンなんですが오종혁イワン、見たことないレベルのガラの悪さ。チンピラやん?!?ってなりました。理知的で酷薄なインテリというよりは頭は良さそうなんだが胡散臭いインテリって感じ。まあ、チンピラ……ある意味カラマーゾフらしい。イワン……?!ってなりましたがこれはこれで良い。数多のカラマーゾフ翻案作品を持ってしても中々出てこない稀代のイワン。出だしからガラ悪そうでドミトリーとの相性が奇跡的に悪そう。(むしろ良いのか?!)上でも言ってますがミーチャとフョードルの諍いを見て嗤うイワン、マジで引くほど楽しそうでじゃ、邪悪すぎる……ってなりました。肉親の諍いを嗤うイワン、そりゃ原作でもありますけどそんなに?!ってくらい嘲笑ってました。普通に性格悪そう。あと、スメルジャコフに対する扱いも徹底して見下しが感じられて、あー、ずっとスメルジャコフのこと見下してきたんだな〜ってのがわかる感じ。スメの部屋で自分の論文見つけた時もまず最初に嫌そうだった……他イワン、スメルジャコフに触ったり触られたりする時、潔癖っぽい嫌がり方とかするのであれはめちゃわかるな、となったんですがこのイワン、別に潔癖とかいうよりスメルジャコフという個人への見下しから汚いもの触った、という感じでハンカチで手を拭き更にそのハンカチを床に打ち捨てる徹底ぶり。他者への傲慢がありありと感じられ、ぶっちゃけフョードルの煽り芸を1番色濃く継いでませんか?!というイワン。それだけに崩壊後から大審問官へ至る過程がまたものすごい見もので、アレだけ他人を馬鹿にしてたイワンが、スメルジャコフとのやりとりから、自身の罪の自覚に至るまでの流れがもう本当に完全に自壊という感じの動揺、否定、葛藤に満ち溢れている。多分スメルジャコフより暴れ回っていた点については若干面白かった(と同時に体張りすぎて心配だった)んだけど、スメルジャコフを契機としてイワンが自ら壊れていく一部始終がありありと感じられる。故に神への問いかけが悲痛。イワンの悲しき知識人としての絶望が怒りと共に奔出していて、凄い見応え。最終盤のイワン、完全に燃え尽きてボロボロでしたが、そりゃああなる。오종혁さんのイワンは、スメルジャコフを契機にしたイワン自身の自壊、という感じが強かったです。そういや全くの余談(?)ですけどイワン、ドミトリーに手渡しでフョードルの灰渡してませんでした?!アレ今までもそうでした?!後生大事に手で父親の遺灰握ってきたの貴方??!そしてそれを兄に手渡したわけ?!

そしてアリョーシャ。なんかめちゃくちゃ歌が上手かったアリョーシャ。정재환さん、純朴さと信仰心と幼い怯えのバランスが絶妙でした。スメルジャコフのことを心底悪魔的に感じ怯え、糾弾するアリョーシャって感じ。兄イワンに信仰を揺さぶられる様が深刻で、感情が爆発して薔薇を投げつけた(激しかった)ホッソリ後、怯えて部屋の隅で膝を抱えている様が悲痛。ブカマのアリョーシャ、原作同様私には掴みにくいキャラクターなんですが、彼の信仰はどうなるのか。父の死を望んでいたと認めながら一体その信仰を貫くことができるのか。という幻の第二部のアリョーシャを感じさせるアリョーシャでしたね。割と第一部後にアリョーシャが僧院を出るのが理解できるアリョーシャだなあという感じでしたね。存在しない記憶でイワンと通じ合うアリョーシャは翻案ならではなんですけど、あれがあるからこそ自壊するイワンを支えるアリョーシャに説得力があるなあとも思いました。ちなみに暴れ回るイワンが力尽きた後、アリョーシャもだいぶ疲れた感じで良かったです。(??)

スメルジャコフ、歌が良かった。何回歌が上手いというつもりじゃという感じですがやはり圧倒的に歌が上手い時は言及せざるを得ない。マジで韓ミュ、全体的にレベルが高すぎるよ……スメルジャコフ、実は配信1回目で見たフィジカルの鬼みたいな凄い動きをする悪魔的スメルジャコフが目に焼き付いていたのであれから印象を変えられるか不安だったのですが、김리현さん、イワンのメフィスト的性質と孤独を抱え見捨てられた個人の苦しみとの共存が絶妙。個人的に好きなタイプのスメルジャコフでした。誰にも顧みられない、兄弟の輪に入ることの出来ない男の世界への(神への)復讐という感じ。ブカマのスメルジャコフ、イワンのガチファンみたいなおスメもいて趣深いんですけど김리현スメルジャコフは割とイワンと距離がある。イワン自体というよりは思想に共鳴してんのかな??あんまりファンじゃなさそう。(??)故に、イワンのメフィストとしてのスメルジャコフ感が非常にありました。イワンを揺さぶりアリョーシャを揺さぶり神への挑戦をするスメルジャコフ、という感じ。くらい部屋で膝を抱える孤独な背中の悲痛さと表裏をなす兄弟たちへ、神への復讐と挑戦的態度がめちゃ見応えありました。イワンを追い詰め瓦解させる一連、まあイワンはイワンで瓦解というか自壊ですけどスメルジャコフめちゃくちゃ怖かった。

てなわけで大体割と朧げながらまとめてきたんですが、あらためてブカマ、明らかに原作より湿度が高い。兄弟間の存在しない記憶とかも挿入されとるおかげで父に顧みられず自らを証明できない孤独な兄弟達の葛藤や苦悩がかなり抉り出されてるので、近親間の愛憎関係や存続殺が浮き彫りになってましたね。そう、神の話なんですけど、ブカマはやはりミーチャ、アリョーシャの二人は基本的に神と対峙するものという感じではないのだな、と。アリョーシャは信じることが難しいからこそ信仰に価値がある、という感じかなと思うので、基本的に一部では神を見ない者なんじゃないかなブカマ君的には。その点スメルジャコフ、特にイワンは、神と対峙した者にそういう話としては言えるのかな……イワンは特に、神への否定を通じてむしろ神を発見した感じですよね。なんか遠藤周作の沈黙っぽいな。

あとやっぱり舞台セットが作品の良さを際立たせていて、中央に父の棺、四隅にそれぞれの部屋、楽器はピアノオンリーで構成する極めてシンプルな配置なので全体の把握がしやすく、キャラクターの特徴も掴みやすい。つくづく小さい箱でシンプルにまとめるのに向いた演目だな〜と思いました。早めにOSTと再演情報ください。円盤も欲しいです。

とまあこんな感じで終始はわわわ……ってなりながらしっかり楽しんでカテコになったんですが、めちゃくちゃ面白かったのが皆さんおもむろにカメラを掲げてもうそっからキャストさんの歌声と共にカシャカシャカシャカシャ!!ってシャッター音が。ほぼ記者会見。なるほど、開演前にみなさんでっけえカメラでピント合わせしてたの、この為かってめちゃくちゃ納得しました。でもわかる、推しの写真撮れるなら絶対撮っときたいよね。カテコとか撮影出来るの、マジでめちゃ良いな〜!!

という訳で!!しっちゃかめっちゃかになってますが一旦切ります!!最後の最後に驚くほどどうでも良い話なんですけど生ブカマを鑑賞して私はやっぱりミーチャを最推し、ミン・ウヒョク氏にやって欲しい意志を新たにしました。いや、贔屓の引き倒しとかじゃないねん……ミン・ウヒョク、マジでミーチャ似合うねん絶対……やって…、