Miruntius ミュージカルと雑記その他

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ミュージカル『レミゼラブル』ソウル公演感想

昨年後半にどうやら私の韓ミュの推し、ミン・ウヒョク氏が遂にジャン・バルジャンやるらしいわよと情報を得ましてですね、はい。馳せ参じたんですわ…あのね、ウヒョク氏がどうこうも勿論あれなんですけど、レミゼやはり滅茶苦茶好きです…韓国キャストのパワーの強さも最高で、正に燃えるような革命ミュージカルでしたよ。

あと、ブルースクエア新韓カードホールはでっかくて良いホールでした。遠すぎかなと思いつつ三階席とったんだけど舞台俯瞰するには十分でした。(せり上がりが凄いからよく見える反面、マジで三階ともなると高っかくてちょっとビックリしたのは秘密…)

 

 

韓ミュおなじみキャストボード

 

ミンバルジャン、良過ぎる

とりあえずこの話からさせて欲しい。まあ上でも言っているように、今回のレミゼは半分くらいミン・ウヒョクのバルジャン見に行ったようなものなんですけど、昨年(2023年)夏に香川で歌ってたときよりさらに声にも厚みが出ており、「まだ…成長してるですって…!?!」みたいな若干の驚愕も覚えました。いやあ…どう考えても年々声域も声の厚みも幅が出てると思うんですけど…ちょっと良すぎませんかねウヒョク氏…

まあ、技術的なことはさておき(???)ジャン・バルジャンとしてもかなりど真ん中のバルジャン、って感じだった気がします。仮釈放されてから社会に拒絶された後の粗暴で自暴自棄な荒れ方と、神父に出会って過去と決別して人生歩み直そうとする決意がストレートに表れてるのも良かったし、何よりコゼットに対する責任感と庇護欲の強さが良かった…バルジャンってファンテーヌに対する罪悪感も伴った庇護欲求からどう考えてもコゼットに対して若干「支配的な父」的側面があると思うんですけど、割とミンバルジャンそのあたりの父権性の強さが随所に出た感じの造形で結構説得力があった気がします…とはいえバルジャンはやっぱり基本陽の性質が強いし反省する男なので、自暴自棄だった時、ファンテーヌのこと、自分の罪を被るかもしれない男のこと、コゼットに対する過干渉諸々、最終的には反省して少しずつ変わって行くところが良いと思うんですが、そのあたりもわかりやすかったですね。ジャベールが自分と社会の決めた一定の規範から一歩も動けない所謂「変わらない」キャラクターだとするとバルジャンは明らかに「変化する」男なので、ジャン・バルジャンとしての成長と変化の過程がよくわかる、いい演技だったな~満足!!という感じです。後単純にでっかいミン・ウヒョクと少女時代のコゼットが一緒にいるとめ~っちゃかわいいのでもうそれだけで500点くらい加算されます。大変宜しい。

これは余談なんですけど、私ジャベールの「Stars」がめちゃくちゃ好きなので(特にノーム・ルイスのは最高すぎ)、キャスト発表の時、ウヒョク氏ジャベでもいいのでは??と思ってたんですが(贔屓の引き倒しともいう)、今回演技見てて「あ~これは絶対バルジャン側の男!!!」って感じだったのでやっぱりバルジャンで大正解だった気がします。それでいうと、ジャベールのキム・ウヒョン氏、前回のジャベールだったのもあるんでしょうがめちゃくちゃ円熟したジャベでとてつもなく凄みがありました。ジャベールの酷薄な冷淡さと固い信念、絶対にこの男は変われないだろうなと思わせる説得力が凄まじくて、どうしてジャベールが川に身を投げなければならなかったのかがわかりすぎるジャベールでした。(川と言えば、最後落ちるときの演出が大変興味深かったです)ウヒョンジャベール、どう考えてもバルジャンのいる世界では生きてはおられないので、バルジャンに道を譲ったその瞬間に彼の前途は何にも無くなっちゃうんですね…感じで言うと映画版のラッセル・クロウのジャベ系の感じでしたね!!ノーム・ルイス、ちょっと優しそうじゃん???

 

アンジョルラスについて

言うてね、レミゼの最推しはこの男なんですよ…まあこの男と彼の側にずっとひっついて回るグランテールという男をセットで愛してるんだと100万回言ってるんですけどね。あの…韓ミュレミゼ、アンジョルラスのアンジョっぽさやばない???アンジョルラスじゃんあんなん…今回のレミゼ見るまで一押しアンジョは映画版の我らがアーロン・トヴェイトのアンジョだったんですけど(アーロンのアンジョはどうしたってみんな好きじゃん。多分)、キム・ソンシクさんのアンジョ、なんていうかあの熱量??情熱?なんて言えば良いかちょっと悩むんですけどアンジョルラスが持ってる爆発しそうな割と危ういエネルギーと周囲を引きずり込むカリスマ性を体現した感じのアンジョで…もうね…アンジョルラスの概念って感じのアンジョルラスでした。声も説得力のあるサイコーの声で、「Red & Black」が一番お気に入ったんですけど、否が応でも耳を傾けざるを得ないパワーと魅力を感じさせる良い歌声だった…マリウスにも結構厳しそうであのアンジョルラス、多分「マリウスわかるけれど…(日本版歌詞)」って言ってくれないよ多分。わかんないと思うマリウスのこと。

それで、アンジョと言えば絶対外せない男、グランテールの話なんですけど…韓ミュレミゼ、マジで満足はしたけど一個言わせて欲しい、これだけは…あのね、グランがイマイチちょっと影が薄くないかな?!?や、随所随所でちゃんと出張ってるのでグランだな~ってのはわかるんですけど…なんか韓国のグランテール、アンジョとの心の距離遠くない??結構アンジョルラスとの距離を感じて、なんて言うか他媒体ほどの熱烈な信仰!心酔!って感じがなかったと思います。いやこれは私が韓国語わからん過ぎて受け取れてないことも普通にあると思うのでアレなんですけど、態度の上では結構アンジョのこと突き放した感じの距離感かな~と思いました。グランテール、(まあハドグランのこと気になりすぎてやたらめったら構いに行ってるラミンアンジョの組はおいといてなんですけど)、基本的にアンジョルラスの外見に心酔しながら彼の理想や信念に一切共感できないっていう冷笑主義の厄介男でいて欲しいのでもっと熱量的にアンジョルラスのことを熱烈に信奉しながら一方で革命を突き放した理想のない男でいて欲しいんですよ…だからこそ最終的にアンジョルラスト手に手を取り合って死んでくのが輝くのに…

というか、グランテールがあんまりアンジョルラスに傾倒してなさそうなのが影響してるのかわからないんですけど、このアンジョルラス一人で死んじゃうんですよ。しかも一番最初に…!!あれ、どう考えても納得がちょっとゆかない…前回舞台でみたレミゼの記憶、確かに朧気なんですけどアンジョ、少なくとも最後に死んでなかったかな…???グランと死んでなかったのはそうだったかもなんですけど、順番的には最後に死んだ感じになってた気がするんですが、韓ミュのアンジョ、最初に死んじゃったのでマジでビックリしました。いやでもわからないな…前見た舞台の記憶の細部が胡乱なので前のもそうだったのかもだし…韓国版にだけ責を負わせるのはフェアじゃないかも…まあとりあえず私は基本的にアンジョルラスが最後にただ一人残って、駆けつけたグランテールと一瞬の魂を触れ合わせて散ってくのがベストだと信じて疑わないのでちょっと悲しかったです、というお話でした。なんにせよ見た後に記録とっておくのは大事ですね。自分の記憶が正しいかもわかんないと感想も胡乱な感じになってしまいます。

まあグチグチ言ってはいますが、正直アンジョルラス含めたABC周りは満足しすぎるくらいしすぎました。停滞して腐敗した社会をなんとか変えようとする学生達の熱気と意思がよく表れていて、燃えるようにエネルギーに満ち溢れているのに、結果的に命を散らせてしまう、そういう物悲しさと、それでも自分たちの手でこの世界を変えようとする強い意志の力を浴びるように感じられたのでレミゼの体験としては文句の付け所がないです。改めて考えて、実際ユゴーの時代からこれだけ経ってもまだ「レミゼラブル」みたいな事がたくさん起きてることには悲しさがあるんですが、革命の力、世界を変えることを信じる力についてこんなに強烈に語る作品がこの世に存在してるのは大事だし、未だ、というか今正に必要とされてる作品だなあと感じました。レミゼのこと、永遠に好きだと思う。

後マジで手のひら返すようで何なんですけど、演出としてはアンジョルラスがバリケードの頂上で撃たれて、向こう側にグラッと崩れ落ちてく様は劇的だしあれはあれで正に「花の散るような」死に方だったなとは思います。実際自分の中に確固としたイメージが強烈に染みついてなかったら衝撃受けてたな~とは思いました。(別の意味で衝撃は受けました)

 

ロビーのアンジョ

 

 

ロビーにあったバリケードのセット
おわりに(?)

特定の二人についてだけ永遠に語ってしまったのでアレなんですけど、全体通して上でも言っているとおりエネルギーに満ちた最高の出来でした。ウヒョク氏の為…とか言いながら韓国まで飛んで本当に良かったです。根本的に自分が「レミゼラブル」という作品が好きで、ミュージカルこれだからやめられんのよなと思わせてくれた良い体験でした。女性陣の歌唱も凄まじくパワフルで、特にジョンウンさんのファンテーヌ、力強いのに打ちのめされた哀しみが胸に迫るような歌唱で、流石初演からのファンテーヌ…という感じでしたよ。あと、幼少期のコゼットお嬢ちゃん、めちゃくちゃなプリティさでした。かわいらしい高い天使みたいな声で歌ってたのも良すぎるしカテコの時にミンバルジャンに抱っこされてグルグルしてたの可愛すぎてどうにかなりそうだった…可愛くて良かったついでに、ガブローシュも大層良かったです。歌い方がマジで映画版のダニエル君のガブを彷彿とさせるちょっと小生意気でませた感じなのが良くて、それだけにあんな幼さで革命に加わって、その命を失う悲しさがいや増すガブローシュでした。

あと、最後にこれは劇場周りの事なんですけど、ロビーにバリケードとかABCカフェのセットがあって、凄い楽しかったです。バリケードで皆さん写真撮ってらしたんですが、結構皆さんアンジョっぽい格好してしっかりポース決めてたりして、準備が良い…!!ってなりました。私と同行者達も記念に撮ったんですが、特に何の準備もなく来ちゃったのでイマイチやりきれなかった感じではありますね。今度はそういう事態に備えて最初から準備して行こうと思います。あと、お写真撮ってくれた現地のお姉さん方、めちゃくちゃサポートも完璧でアップも引きも一杯撮ってくれたので、良いお写真が選べました。大変感謝しております。